時を遡る事、十数年前――



『…………あれ?』



一人の少女が、ある農村地で呆然と立ち尽くしていた


年は八・九歳程で、立派な着物を纏っている

顔立ちはとても整ったもので、だがその表情には何処か大人びた部分が垣間見れた



『…おかしい。城に居た筈なんだが…』



少女は呆然としながら呟く

どうやら彼女は、何処かの大名の娘なのだろう


そんな何故立場ある少女が、農村の地に?

と誰もが疑問に思うだろう


だが肝心の少女本人すら、困惑している状態だ



『……ん?』



ふと彼女が、明後日の方を振り向く

そして目を細め、何かを探る様な表情を浮かべる



『……泣き声?』



うっすらと何処からか聞こえてくるのは、小さい小さい泣き声

彼女はその声に惹かれる様に、足を運んだ



「……ヒック……」

『………子供?』



泣き声を辿って歩くと、彼女の眼前に現れたのは五・六歳程の子供

目を赤く腫らし、涙を流し、不安げに表情を曇らせている


だが彼女が目を引いたのは、その子供の着物

見た事のない衣服を纏っていたのだ



『………名前は何と言う?』



子供の目線に合わせ、少女は屈み込んで、問い掛けた

すると子供は恐る恐る、顔を上げて口を開く



「……和泉……おねえちゃんは?」

『伊達 紫苑だ』

「…しおん…おねえちゃん?」



首を傾げながら和泉は、紫苑の名前を口にする

すると何故か彼女は、眉間に皺を寄せた



『(何か照れ臭いな)まぁ…良い。和泉、御両親はどうした?』

「…わかんない…ここにいたの…」



ふるふると和泉は首を横に降る

その反応に紫苑は、目を僅かに細めた



『(どうやら、嘘は付いていない様だ)』




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