二人は屯所の裏庭に来ていた
調度今の季節、裏庭には一本の立派な桜が満開だった
「こっち…だよね?」
「うん…」
小声で話す二人
歌声が美しく響き渡る
――…桜の様に儚く 花びらの様に舞い散り
天津風(あまつかぜ)よ どうか知らせて
貴方への想いを…
歌声は美しくも儚く
それは裏庭の桜の木の下から聞こえた
そこには
夜空に向かって、唄う青葉の姿が
その均整な顔立ちが、月明かりに照らされて
美しさが尚増していた
まるで一枚の絵画の様で
その光景に千鶴もお千も、息を呑んだ
そして二人は同時に思った
どうしてこの人は、この時代の人じゃないのか…と
mae tugi
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