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『阿呆。母乳出るのは赤子産んだ女性だけで、独り身の私には無理だ』

「……ごめん」

『それよか平助、千鶴呼んでこい』

「…何で?」

『良いから』



青葉の言葉を聞き、平助は千鶴と共に広間に戻ってきた



「わぁ…可愛い!」

『千鶴、この子ちょっと頼む』

「私が?」



嘆息混じりで青葉は、幹部一同を指差す



『こいつら荒っぽいから、任せられん』



事実なだけに皆、ぐぅの音も出ず


青葉は暫くすると、小皿を手に広間へと戻ってきた



「姉さん、それは?」

『重湯の汁。木綿の手ぬぐいに含ませて吸わせる。白湯でも良い』

「へぇ…あ、吸ってら!」



んぐんぐ、と赤ん坊は重湯の汁を、手ぬぐい越しに吸い始めた

暫くすると満足したのか、手ぬぐいから口を離した


青葉は肩口に赤ちゃんの顔がくる様に、左手をお尻辺りに持っていく



「姉さん、何するんですか?」

『ゲップさせる、赤子は出来ないんだ』



そう言って青葉は、右手で軽く赤子の背中をトントンと叩く

すると赤子から、ケフッと音が聞こえた



「何か、慣れてねぇ?」



関心する眼差しで、左之助が最もな問い掛けをした



『あぁ。城下町で良く世話したからなぁ』



――間――



「ちょい待ち。一応お前、姫さんだよな?」

『一応。しょっちゅう城下町抜け出してたけど』

「良いのかよ…」



脱力する一同

実際青葉が城下町へ繰り出すのには、理由があるのだが…それは別の機会に説明しよう



「青葉君!是非ともその子の世話を頼めるか?」



近藤の言葉に、青葉は固まる



『……近藤さん、私医察の仕事あんだけど…』

「隣土方さんだから大丈夫じゃね?」

『左之、てめぇ…』



半目で左之助を睨む青葉、そこに土方が食いかかってきた



「待てよ、勝手に俺を巻き込むなっ!」

「千鶴ちゃんもいんだし、大丈夫だろ」



まぁ、そんな訳で



本人達の意見も空しく、満場一致で赤子の世話を土方・青葉がする事に


だが二人にも仕事がある

二人を助力する形で、千鶴と平助も手伝う事になった



「『………はぁ」』



青葉の自室にて、溜息を漏らす土方と青葉

千鶴と平助は必要な物を買い出し中



『とりあえず、だ。私らが仕事の時は千鶴に預けよう』

「だな………平助が怖ぇな……」

『確かに……』



二言三言話した二人は、平助には赤子の世話はさせないと判断

これには買い出しから戻ってきた本人は、不満げ


だが平助に預けると、何かしら怖い…特に赤子の身が


最終的には平助も渋々納得



三人による、にわか育児の始まり



■■■



「え…と左腕を頭を乗せるようにして…右手は左肘辺りに上向きでそえる…」



現在赤子は、千鶴と平助担当

土方と青葉は仕事に追われてます



「かーいぃよなぁ…」



赤子を不慣れな手つきで抱く千鶴を、平助は穏やかな眼差しで見つめる



「けどさぁ…」



平助の穏やかな眼差しが、急に曇る



「…何で屯所前に置いてったんだろ…」

「…きっと…何か理由があったんだよ…」




昼前


千鶴と平助は赤子を連れて、土方の自室へ



「土方さーん!」

「平助か、入れ」



土方自室前で声をかけた平助、部屋から気さくな返答が返ってきた



『……無事、だな……』

「……だな」



入ってきた三人を見て、室内にいた土方と青葉は安堵の息を吐く



「…何だよ、それー」



不満げに頬を膨らませる平助、千鶴は苦笑いを漏らす



「姉さん、この子の名前って分かりました?」

『あぁ手紙に添えてあった…【唯】だと』



それに平助は首を傾げる



「何か女みてぇな名前だなぁ」




mae tugi





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