後ろ髪引かれながらも、百合は屯所を後にした
『………なぁ……どうすんだ、これから』
「あ?」
百合を見送った二人は、土方の自室に戻った
そして書類と睨めっこ
『……気付いてない訳ないだろ、お前が…他の連中に見られたぞ、アレ』
「……良いんじゃねぇか?」
『良くねぇだろ!千鶴と平助と源さんはまだしも、他の皆は俺の事知らねえんだぞ!?』
そうなのだ
まだこの時点で、彼女を【女性】と知っているのは
彼女の眼前にいる土方と、千鶴と平助と井上のみ
他の幹部や平隊士は皆、青葉を男と勘違いしている
「…不都合ねえだろ?」
『いや、あるから言ってんだけど!?』
焦る青葉を余所に、土方は何のその
「(良いんだよ、勘違いさせておいて…)」
書類と格闘しながら、土方は内心で愚痴った
「(…お前が誰かに取られちまうなんて、堪ったもんじゃねえ…)」
それは彼なりの【嫉妬】、彼なりの【防衛策】で
「(…変な虫はこれで付かねえだろ…)」
横目で慌てる彼女を見やりながら、土方は一先ず安堵の息を漏らした
後日――
土方と青葉が衆道の仲と
隊士内で密かに噂されるのを、記しておこう
災難 完
mae tugi
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