青葉は首を傾げながら、問い掛けた
「あぁ。俺がまだガキの頃…こうやって浴衣着て、兄弟全員で祭に行ったな…」
懐かしげに、口元を緩ませる土方
それに青葉も、笑みを漏らす
『…私も、あったな…。
何時だったか…小十郎と喜多と綱元が、城下町の祭に連れてってくれて。あん時は大変だったな…政兄が迷子になったり、成が泣きじゃくったり…』
二人はお互いに顔を見合わせると、苦笑に似た笑みを浮かべる
その時だった
「ひっく…ひっく…」
小さな泣き声が、二人の耳に届いたのは
目を瞬き、二人は辺りを見回す
さほど離れてない場所に、赤い浴衣を着た小さな女の子が泣いていた
『どうしたの?』
青葉はその娘に視線を合わせる様にしゃがむと、優しく問い掛ける
「…ととさま…かかさま…いないの…」
泣きじゃくりながら、拙い言葉を紡ぐ女の子
それを聞いた二人は視線を合わせた
「…迷子、か」
『…仕方ない、ね』
苦笑を浮かべた二人は、女の子に手を差し延べた
『お名前何ていうのかな?お姉ちゃんは鈴々音、こっちのお兄ちゃんは歳三っていうの』
「…しおり」
しおり、はそう言うと、土方の浴衣を握る
まるで一人にしないで、と言わんばかりに
「…よし、しおり。お前の父ちゃんと母ちゃんを捜すぞ!」
土方は笑みを浮かべながら、しおりを肩へと座らせる
「わ…高いっ!」
『これなら見つかるでしょ?』
「うんっ!」
少女から涙が消えた
それに二人は安堵し、祭の中を闊歩し始めた
mae tugi
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