『…んで?何故にこうなる?』
土方に連れて来られ、青葉は呉服屋に居た
いまいち状況が飲み込め無い彼女は、眉間に皺を寄せている
「クスクスッ…相変わらずやぁ…」
『…俺が変わるとでも思ったか、早紀?』
「そやなぁ、鈴々音#やし。あ、次はこれ着てな!」
『……早紀……』
土方の知り合いの呉服屋・井塚 喜一の妹、早紀
気立てが良く、きっぷが良い性格で、常連の青葉とは気が合っていた
「…土方はんから聞いてないんやな。全くあの人も不器用な人や…」
ぽつりと呟いた早紀の言葉を、青葉が拾う事はなく
彼女は眉間に皺を寄せ、女物の着物と睨めっこしている人物を見やると、溜息をついた
「…出来た!」
『…誰だこれ』
早紀は満足そうに微笑み
鏡の前に写る自身に、青葉は目を見開く
そこに写っていたのは――
華やかに桜の刺繍が施された、濃い青である瑠璃色の浴衣を纏い
鮮やかな橙色の帯が、浴衣の色を引き出す
いつもは一括りにしている髪も丁寧に結い上げ、簪を差し
白滋の様な肌と、艶やかな紅
「思った通りや!鈴々音は顔立ちええから、化粧映えするんよ」
『……佐助も似た様な事言ってたな…』
「なんか言うた?」
『や、こっちの話。つか何で浴衣?』
彼女の問い掛けに、早紀はまたも溜息を漏らす
「ほんま、土方はんから聞いてないんやなぁ…」
『は?トシ?』
目を瞬く青葉だが早紀は、何も言わず彼女の手を引く
「本人に聞いた方が早いわな」
そう言うと早紀は青葉を連れて、呉服屋の外へと足を運んだ
mae tugi
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