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男の刀が青葉に振り下ろされる瞬間――



土方は刀の鞘を投げた

鞘は男の手元に直撃し、刀の軌道が逸れ


それを見計らう様に、青葉は身をよじる



結果的に軌道が逸れた男の刀は、束縛していた青葉の縄を断ち切った



「何っ!!?」



土方は青葉の縄が切れたと同時に駆け出し

彼女の腕を引っ張って、自身の腕の中へと埋めた



「……返して貰うぜ?うちの竜を、な?」



不敵に笑う土方に、男は唇を噛み締める



『ちょいと…何でここなん?』

「るせぇ、黙ってろ」



土方の腕の中で藻掻く青葉だが、彼はそれを一刀両断



「くっ……」

「悪ぃな、こいつは渡せねぇんだ…」



そう言うと土方は、青葉の括っていた髪紐を解く

さらり、と

柔らかで美しい長髪が流れる



そして土方は何を考えているのか

青葉の顎を掴むと、口付けを交わした


これには男も目を見開いた



『んっ!ふぅ…』



くちゃり、と艶めいた音を起て

土方は彼女の唇から、自身の唇を離す



「こいつは俺の女だ…手ぇ出すなら容赦しねぇ」

『………っー!』



呆然とする男に、土方は艶めいた笑みを浮かべて言い退けた

青葉本人は、顔を真っ赤にさせて悶絶



だが我に返った男は、刀を構え直し

無謀にも土方へ向かって行った



「……フン」



土方は青葉を抱え直し、片手で男を切り伏せた



「ぐぁっ……」



鮮血が、廃寺に舞い散る

男は何かを告げ、息を引き取った



『…………わり……』



土方の裾を掴みながら青葉は小さく、ほんの小さく呟いた

その表情は今にも泣きそうで


そんな彼女に、土方は溜息を漏らした



「……なんか、言われたのか?」



mae tugi





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