『…つまりだ。自分が非番で給料も貰った事だし、千鶴も連れて町に行きたい…と?』
「うんっ!」
自室で平助から、青葉は事情を聞き及ぶ
「兄ちゃんも午後から非番って、源さんから聞いたんだ!」
『…確かに、午後は非番だが…』
ちらりと青葉が見やるのは、己の文机
文机には書類の山が…
『(午後にコレ片付けたかったんだがなぁ…しかし、平助の頼みだし…千鶴にも羽根を伸ばしてやらせてぇし…)』
眉間に皺を寄せて青葉は悩む
平助を見ると、目を輝かせて、返事をまだかと待ち望んでいる
『(…幸村と同属か?)』
不意に青葉の脳裏をよぎった、己が兄の宿敵
彼もまた平助に似た、天真爛漫青年だった
「青葉、良いかって…何やってやがる?」
そこへ土方が書類を片手に、青葉の部屋へと入って来る
そして現状を見て、眉間に皺を寄せた
『あー、買い物行きたいんだと。千鶴と』
そう言うと青葉は、視線で平助を指す
「…そういや、青葉は午後から非番だったな」
『…しゃあねぇなぁ…行ってやるよ』
溜息混じりで青葉が答えると、平助は満面の笑みを浮かべた
「ありがと、青葉兄ちゃん!俺、千鶴に言ってくるっ!」
そう言うなり平助は、部屋を飛び出して駆けて行く
「…良かったのか?ソイツ片付けるつもりだったんだろ?」
土方がソイツと言って指差したのは、書類の山
『…まぁね。…トシ…』
「あ?」
『確か非番だよね?…お前も道連れな』
「げっ!?」
■■■
てな訳で
「あれ?土方さんも一緒?」
屯所前に集まった際、平助が首を傾げた
『非番だったらしいからな』
ニヤニヤと笑う青葉に、土方は眉間に皺を寄せる
「ふぅーん…」
不思議そうにするも、平助はそれ以上追求はせず
『んじゃ行くか』
***
「…おい」
『何?』
「…兄ちゃん、ここって角屋じゃ…」
屯所を出て、一番最初に向かったのは…何故か角屋
『……フフフ』
不敵な笑みを浮かべる青葉に、三人はつい後ずさる
「青葉はん!」
『菊!』
青葉の名を呼んだのは、以前何度も手を貸してくれた花魁の君菊だった
『菊、準備は?』
「ばっちりどす♪」
二人の会話を聞いた土方は察した様で、顔色を瞬時に顰める
「……まさか」
『「その、まさか/どす」』
「……」
綺麗に揃った二人の声に、土方はとある人物に同情の瞳で見つめた
―暫くお待ち下さい―
「出来ましたぇ!」
角屋の広間に通された四人
青葉と千鶴は別室に移動し、土方と平助は待ちぼうけ
暫く待つと、君菊と共に女子姿の千鶴が現れた
「……君菊さん」
頬を赤らめて照れる千鶴に、平助は呆然
ふと土方が何かに気付いた
「……青葉はどうした?」
mae tugi
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