【子供らしくない子供】
それが当時の俺だった。一つ聞けば十を知る、大人顔負けの口調と頭脳
それは大層、周囲の大人達の畏怖になっただろう
まあそれはそれで仕方無い、何せ実際は二十歳を越えているんだから。上手く立ち回れなかったのは、俺の非だが…
大人達は俺と視線を合わせず、また口も交わさず。血を分けた父親も同様で…俺を唯一受け入れてくれたのは祖父とその仲間達、そして実弟のみ
そんな折、祖父の仲間達が些細な問題を起こした。それは次第に悪化、俺達にまで被害が及ぶ程に。その頃祖父の元に預けられていた俺は、祖父の知り合いに事が沈静化するまで預かって貰う事になった
だがまさか、関東圏内から出るとは予想外も良い所。祖父の知り合いがまさか…いや最早、何も言うまい。しかしどこをどうやって、祖父と知り合ったが疑問が湧いたのもまた事実。まぁ聞いた所で祖父は話してくれんと思うので、そこは諦める
―…壮一郎や
―…燐…
祖父の知り合いの息子…11か12位の少々目付きの悪い少年。だがこの少年、見掛けによらず洞察眼が鋭く、俺の本性をあっと言う間に見破った
―…テメェ、ええ加減にせぇや。何猫被ってん
―…ボクはね、【子供らしくない子供】なんだよ
当時は相当擦れていた。一部の者にしか本心を明かさず、一線を引くのは当たり前だと思っていた
―…ボクは、【異端】なんだよ。そしてヒトは【異端】を【化け物】と呼ぶんだ
―…ボクはね、爺さまと弟にしか認識されていない。それ以外の人物は、視線すら合わせない。それがボクの【当たり前】
―…馬鹿やろ、お前!異端でも何でも、お前はお前や!!
目から鱗、とはこの事か
ある事件がきっかけで、俺は変われた…いや変わる事が出来た。それからだ、彼から色々な事を教授される様になるのは。一週間もすると、人格は一変
―…壮兄!これ何?
―…あ?これはな…
擦り傷が絶えない、元気溢れ過ぎるのとなった。これには自分も驚いたが、彼はもっと驚いてた…寧ろ呆れていたのかもしれない
―…良い、の?
―…ああ…ええか、約束忘れんやないで?
―…うん…忘れない、絶対に忘れないよ。壮兄…
約二ヶ月後、東京に戻る事になった
少々手間取ったが、事態が沈静化したと連絡が入ったからである。帰り際、彼はとある約束を交わしてくれた。それは幼稚で戯言の様な内容、それでも俺は嬉しかった…私を、受け入れてくれてるから
―…やるわ
―…これ?
―…"約束の証"や。無くしたらアカン、ええな?
―…うん…うん!!
約束の証、として貰った金色のロケットは12年の月日が経過しても尚、俺の首元に下がっていた。それは彼との約束を忘れぬが為
もう12年…祖父が他界して10年が経つ
祖父は弟に自身の事を、ひた隠しにしていた。あの子は優しいから、優し過ぎるから。きっとこの世界の水は合わない、寧ろ俺の方が合うだろう
鳴海がせめて高校を卒業した後、この真実を語りたい。あの子は今、心身共に成長期真っ只中だから
優しいあの子は堅気でいた方が良い
決してこの、極道の道を歩ませてはならない
―…歩むなら、私が歩む
11.11.24.