No.06

【子供らしくない子供】

それが当時の俺だった。一つ聞けば十を知る、大人顔負けの口調と頭脳

それは大層、周囲の大人達の畏怖になっただろう


まあそれはそれで仕方無い、何せ実際は二十歳を越えているんだから。上手く立ち回れなかったのは、俺の非だが…


大人達は俺と視線を合わせず、また口も交わさず。血を分けた父親も同様で…俺を唯一受け入れてくれたのは祖父とその仲間達、そして実弟のみ

そんな折、祖父の仲間達が些細な問題を起こした。それは次第に悪化、俺達にまで被害が及ぶ程に。その頃祖父の元に預けられていた俺は、祖父の知り合いに事が沈静化するまで預かって貰う事になった


だがまさか、関東圏内から出るとは予想外も良い所。祖父の知り合いがまさか…いや最早、何も言うまい。しかしどこをどうやって、祖父と知り合ったが疑問が湧いたのもまた事実。まぁ聞いた所で祖父は話してくれんと思うので、そこは諦める



―…壮一郎や

―…燐…




祖父の知り合いの息子…11か12位の少々目付きの悪い少年。だがこの少年、見掛けによらず洞察眼が鋭く、俺の本性をあっと言う間に見破った



―…テメェ、ええ加減にせぇや。何猫被ってん

―…ボクはね、【子供らしくない子供】なんだよ




当時は相当擦れていた。一部の者にしか本心を明かさず、一線を引くのは当たり前だと思っていた



―…ボクは、【異端】なんだよ。そしてヒトは【異端】を【化け物】と呼ぶんだ

―…ボクはね、爺さまと弟にしか認識されていない。それ以外の人物は、視線すら合わせない。それがボクの【当たり前】

―…馬鹿やろ、お前!異端でも何でも、お前はお前や!!




目から鱗、とはこの事か

ある事件がきっかけで、俺は変われた…いや変わる事が出来た。それからだ、彼から色々な事を教授される様になるのは。一週間もすると、人格は一変



―…壮兄!これ何?

―…あ?これはな…




擦り傷が絶えない、元気溢れ過ぎるのとなった。これには自分も驚いたが、彼はもっと驚いてた…寧ろ呆れていたのかもしれない



―…良い、の?

―…ああ…ええか、約束忘れんやないで?

―…うん…忘れない、絶対に忘れないよ。壮兄…




約二ヶ月後、東京に戻る事になった

少々手間取ったが、事態が沈静化したと連絡が入ったからである。帰り際、彼はとある約束を交わしてくれた。それは幼稚で戯言の様な内容、それでも俺は嬉しかった…私を、受け入れてくれてるから



―…やるわ

―…これ?

―…"約束の証"や。無くしたらアカン、ええな?

―…うん…うん!!



約束の証、として貰った金色のロケットは12年の月日が経過しても尚、俺の首元に下がっていた。それは彼との約束を忘れぬが為


もう12年…祖父が他界して10年が経つ


祖父は弟に自身の事を、ひた隠しにしていた。あの子は優しいから、優し過ぎるから。きっとこの世界の水は合わない、寧ろ俺の方が合うだろう

鳴海がせめて高校を卒業した後、この真実を語りたい。あの子は今、心身共に成長期真っ只中だから



優しいあの子は堅気でいた方が良い

決してこの、極道の道を歩ませてはならない



―…歩むなら、私が歩む


11.11.24.




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