―…ええか、約束忘れんやないで?
―…うん…忘れない、絶対に忘れないよ。――兄…
……何つう懐かしい夢を見てんだ…確か俺が8才の頃の記憶だろ、コレ
枕元の目覚まし時計の針を見ると、アラームが鳴った形跡がない。時計より早く目を覚ましたのか…嘘だろあり得ねぇ、マジでか。朝弱い、この俺がか?
『……約束、か』
あれから…12年か
恐らく相手は覚えていないだろう、8才の餓鬼の戯言だと。寧ろ覚えている方が凄ぇと思うが、如何せん確認が取れん
『いや…確認を取るのが怖いのか』
弟から後に聞かされた事の顛末に、肝を冷やしたのがつい先日。だが探偵の助手業とラーメン屋のバイトを弟は、現在も続けている。あの子にとって、彼等との接触は成長になると踏んだからだ
何より、【彼】がいる
昔と変わってなければ、彼の元には人が集まってるだろう。昔から口も目付きも悪いが、無駄に面倒見が良い
そんな彼が、愚弟を放っておく訳がない
『………変わってなさそーだな』
今頃どうしているか?
俺とは幼い時に一度会ったきり。それ以降は全く会っていないし、連絡も取っていない
だが愚弟の話によると、どうやら元気にやっている様だ
このまま会わない方が、恐らく互いの為だろう。約束に縛られず、自身の道を歩み続けて欲しい。そう願うのは、俺の押し付けだろうか?
『約束を忘れ、俺の事も忘れている事を願う』
だが。物事と言うのは、そう簡単に上手く運ばない事を
―…数日後に痛感する
11.11.07.