No.01

藤島家の大黒柱である、我が父親は現在海外出張中
帰ってくるのも、年に3回か4回あるかないか…ほぼ1年を弟・鳴海と暮らす毎日である

父が中々帰って来ないのは、実は仕事以外に理由があった。だが弟に、その理由は伏せてる。あの子が知ったら、間違いなく激昂するだろう



『…バイト?』

「う、うん…ラーメン屋、なんだけど」



夕飯時に鳴海の口から出てきた言葉に、目を瞬かせた。ウチの教育方針は放任主義

テメェの事はテメェでしろ、テメェの道はテメェで決めろ…そんな感じだ。まぁ父親が父親だからな



『別に反対はせんよ、ナルが決めた事なんだろ?中途半端にすんじゃないよ』

「うん!ありがと、燐姉さんっ!!」



満面の笑みを浮かべる我が弟に、ふと疑問が過る。しかしまた急だな、前はバイトせんかったのに



『良い人でもいたか?』

「ええっ!?ち、違うっ!!」



高校生になったのに、このウブさはどうだろう。少々姉さんは心配になってきたぞ?

まぁ引っ越しを繰り返し、人の輪に溶け込めなくなっているかもしれん


そこは済まない事をしたと、反省はしている。つか父親さえ帰ってくりゃいい話なのだが…あの糞親父、いい加減にしやがれ



『お前の人生だ、好きに生きな。ただし、無茶はしない様に』

「うんっ!!」



だがこの時、俺は知らなかった


我が弟が厄介な事件に、首を突っ込んでいた事も

それが縁で、極道と言う世界の人々と知り合いになったと言う事も


俺の知人に出会っていた事も



―…俺がそれを知るのは、暫く後の事となる


11.11.06.




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