藤島家の大黒柱である、我が父親は現在海外出張中
帰ってくるのも、年に3回か4回あるかないか…ほぼ1年を弟・鳴海と暮らす毎日である
父が中々帰って来ないのは、実は仕事以外に理由があった。だが弟に、その理由は伏せてる。あの子が知ったら、間違いなく激昂するだろう
『…バイト?』
「う、うん…ラーメン屋、なんだけど」
夕飯時に鳴海の口から出てきた言葉に、目を瞬かせた。ウチの教育方針は放任主義
テメェの事はテメェでしろ、テメェの道はテメェで決めろ…そんな感じだ。まぁ父親が父親だからな
『別に反対はせんよ、ナルが決めた事なんだろ?中途半端にすんじゃないよ』
「うん!ありがと、燐姉さんっ!!」
満面の笑みを浮かべる我が弟に、ふと疑問が過る。しかしまた急だな、前はバイトせんかったのに
『良い人でもいたか?』
「ええっ!?ち、違うっ!!」
高校生になったのに、このウブさはどうだろう。少々姉さんは心配になってきたぞ?
まぁ引っ越しを繰り返し、人の輪に溶け込めなくなっているかもしれん
そこは済まない事をしたと、反省はしている。つか父親さえ帰ってくりゃいい話なのだが…あの糞親父、いい加減にしやがれ
『お前の人生だ、好きに生きな。ただし、無茶はしない様に』
「うんっ!!」
だがこの時、俺は知らなかった
我が弟が厄介な事件に、首を突っ込んでいた事も
それが縁で、極道と言う世界の人々と知り合いになったと言う事も
俺の知人に出会っていた事も
―…俺がそれを知るのは、暫く後の事となる
11.11.06.