どうやら平坂錬次の件は、無事に終幕を迎えた。一般人に被害が出なかった事に、まず安堵
しかし…あの二人、どうする
掛け違いのままで別れさせるのも、どうかと思うが…こればっかは第三者が立ち入る事ではない
「おったおった!」
『ん?』
「よっ!」
『……平坂、錬次?』
何故俺の目前にいる?まさか…俺を探していた?
いや、コイツが俺を探す要素など無い筈だが…
「仰山探したで、聞きとう事があるんや」
『聞きたい、事?』
錬次の言葉に俺は訝しげに、目を細めた。コイツが知りたい情報など、俺は与えてない筈だ。それとも鳴海関係か?
「ほい」
『すまん』
「ええて、これ位」
とりあえず近場の公園に場所を移した俺達は、飲料を購入して口をつけた。購入したのは錬次、ニートの癖に
『んで。俺に聞きたい事があるんだって?』
「そや。あんさん、壮の事どう思っとるん?」
『何だ、藪から棒に』
心臓が大きく跳ねた
雛村壮一郎は幼少の頃の知り合いなだけで、それ以外の何もない。そう…何も無い…
「んー…俺はな。お前さんが壮を好いとるんやないかな〜、て思うてる」
『何を寝惚けた事を』
コイツの洞察力はホント侮れん
流石彼とツートップを張ってただけの事はある。だが俺もそう易々と、情報を与える程馬鹿ではない
「違うんか?」
『餓鬼の頃に会っただけ。そう言った筈だ』
「そやけどなぁ…あんさんの瞳、一緒なんよ」
『……誰とだ』
「壮と」
ちょ、待て…今、何て言った?
「あの後、壮と少し話したんよ。そん時あんさんの話をしたらな、おんなじ瞳しとったで」
いつの間に接触してたんだ?コイツら…いや。そもそも、何で俺の話題になる?
「お前さん…壮の事、どう思うてるん?」
『っ…』
以前とは違う揺らぎない強い瞳が、俺を突き刺す。いや違う…恐らくコレが、本来の平坂錬次なのだろう。彼と似た瞳に、意志が揺らぐ
『……一人の男性として、好いているよ』
「あっ、やっぱし?」
オイ、コラ。何でテメェ、んな嬉しそうなんだよ?
『だがこれを雛村壮一郎に、告げる事は無い』
「えぇ〜!?何でや?似合いなのに!!」
『五月蝿い、喧しい』
んなショボくれて、犬かお前は
大体俺が告ろうが告らなろうが、テメェには関係ねぇだろう
「あんさんやったら、壮を任せられる思うたんやけどなぁ…」
『残念だったな』
この野郎、俺を雛村壮一郎のストッパーにさせる気だったのか?
「まぁでも、これだけは覚えといてな。壮はあんさんを、大切に思うてるのは確かや」
『………は?何を…』
「俺な、壮に言うたん。
"燐は別嬪やなぁ。フリーなら、ワイの彼女にしてみよか?"ってな…そしたら壮のヤツ、メッチャ激怒してなぁ」
嘘だろ、マジでか。つか覚えてた?
「"アイツに手ぇ出したら、お前でも許さねぇ!"って豪語しよった。って、燐?」
『…覚えて、たの?10年も前の話だぞ…』
「覚えとったみたいやな」
錬次のニヤつく笑みが何故か、妙にムカつく。とりあえず殴っておこう
「っー!?な、何すんやっ!?」
『ムカついたから』
「ひどっ!!」
しっかし、10年前の事を覚えてるなんてまぁ…酔狂にも程がある
あ、やべ…頬が緩む…
『…そか。壮兄、覚えててくれたんだ…』
その呟きは当然、隣の錬次に伝わっていて
再び錬次をボコる事になる
(絶対、誰にも言うんじゃねぇぞ)
(い、いえっさぁー…)
12.02.16.