No.11

どうやら平坂錬次の件は、無事に終幕を迎えた。一般人に被害が出なかった事に、まず安堵

しかし…あの二人、どうする
掛け違いのままで別れさせるのも、どうかと思うが…こればっかは第三者が立ち入る事ではない



「おったおった!」

『ん?』

「よっ!」

『……平坂、錬次?』



何故俺の目前にいる?まさか…俺を探していた?

いや、コイツが俺を探す要素など無い筈だが…



「仰山探したで、聞きとう事があるんや」

『聞きたい、事?』



錬次の言葉に俺は訝しげに、目を細めた。コイツが知りたい情報など、俺は与えてない筈だ。それとも鳴海関係か?



「ほい」

『すまん』

「ええて、これ位」



とりあえず近場の公園に場所を移した俺達は、飲料を購入して口をつけた。購入したのは錬次、ニートの癖に



『んで。俺に聞きたい事があるんだって?』

「そや。あんさん、壮の事どう思っとるん?」

『何だ、藪から棒に』



心臓が大きく跳ねた
雛村壮一郎は幼少の頃の知り合いなだけで、それ以外の何もない。そう…何も無い…



「んー…俺はな。お前さんが壮を好いとるんやないかな〜、て思うてる」

『何を寝惚けた事を』



コイツの洞察力はホント侮れん
流石彼とツートップを張ってただけの事はある。だが俺もそう易々と、情報を与える程馬鹿ではない



「違うんか?」

『餓鬼の頃に会っただけ。そう言った筈だ』

「そやけどなぁ…あんさんの瞳、一緒なんよ」

『……誰とだ』

「壮と」



ちょ、待て…今、何て言った?



「あの後、壮と少し話したんよ。そん時あんさんの話をしたらな、おんなじ瞳しとったで」



いつの間に接触してたんだ?コイツら…いや。そもそも、何で俺の話題になる?



「お前さん…壮の事、どう思うてるん?」

『っ…』



以前とは違う揺らぎない強い瞳が、俺を突き刺す。いや違う…恐らくコレが、本来の平坂錬次なのだろう。彼と似た瞳に、意志が揺らぐ



『……一人の男性として、好いているよ』

「あっ、やっぱし?」



オイ、コラ。何でテメェ、んな嬉しそうなんだよ?



『だがこれを雛村壮一郎に、告げる事は無い』

「えぇ〜!?何でや?似合いなのに!!」

『五月蝿い、喧しい』



んなショボくれて、犬かお前は
大体俺が告ろうが告らなろうが、テメェには関係ねぇだろう



「あんさんやったら、壮を任せられる思うたんやけどなぁ…」

『残念だったな』



この野郎、俺を雛村壮一郎のストッパーにさせる気だったのか?



「まぁでも、これだけは覚えといてな。壮はあんさんを、大切に思うてるのは確かや」

『………は?何を…』

「俺な、壮に言うたん。
"燐は別嬪やなぁ。フリーなら、ワイの彼女にしてみよか?"ってな…そしたら壮のヤツ、メッチャ激怒してなぁ」



嘘だろ、マジでか。つか覚えてた?



「"アイツに手ぇ出したら、お前でも許さねぇ!"って豪語しよった。って、燐?」

『…覚えて、たの?10年も前の話だぞ…』

「覚えとったみたいやな」



錬次のニヤつく笑みが何故か、妙にムカつく。とりあえず殴っておこう



「っー!?な、何すんやっ!?」

『ムカついたから』

「ひどっ!!」



しっかし、10年前の事を覚えてるなんてまぁ…酔狂にも程がある

あ、やべ…頬が緩む…



『…そか。壮兄、覚えててくれたんだ…』



その呟きは当然、隣の錬次に伝わっていて

再び錬次をボコる事になる






(絶対、誰にも言うんじゃねぇぞ)
(い、いえっさぁー…)

12.02.16.




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