No.10

雛村壮一郎の思いは、我が弟に託された。やはり血筋だろうか、啖呵を切る所は祖父を彷彿とさせた

…やはりこの子は、この世界にあまり足を踏み込ませない方が良い。だが彼の背中を見て、弟は確実に成長している。それは肉体的ではなく、精神的に



『………』



ライブ当日
会場の外から様子を伺う、客入りは上々。その中に明らかに、異質な奴らが紛れ込んでいる。だがそれも恐らく、何事もなく終わるだろう。仕切る頭さえ押さえれば、結局は烏合の衆なのだから



『真実は知る事は、時に荊の痛みを伴う』



それは祖父の言葉の一つ

真実を知る事は、時に痛みを伴う。自身が望む望まない関係無く、不条理な事実が突き付けられ。それは時にその者の痛みとなり、心の傷となる

嘘偽り無い真実を、曝け出すのは容易だ。しかし時に隠蔽していた真実は、その者を守る盾でもあるのだ



恐らく今回の一件は、後者に当てはまる



雛村壮一郎が隠していた真実は、平坂錬次にとって衝撃的なもの。己の信じていたものが、安易に崩れさってしまう



『…馬鹿だよ、全く』



彼は…雛村壮一郎は…
全てを理解した上で、敢えて真実を隠蔽した。例え五分の盃を交わした友から、罵倒されても。義兄弟の盃を交わした弟に、何を言われても…口を割るつもりはなかったのだろう

―…残酷で優しい嘘を



全ては、彼女の為に


そして…錬次の為に



『…ほんっと、ばかだ』



綺麗な歌声が、会場に響く

歪んでいた絆が、解けた気がした


11.12.24.




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