開通式と一緒に拝命式もすると、駅長から通知が届きました
それからというもの、サータは急激に多忙。彼女が不在でも整備士の方々が働ける様にと、色々采配を取っていらっしゃるのでございます
『……死ぬ……』
「サータ、大丈夫?」
『……だめ……』
サブウェイマスターとして働ける様にと、駅長室内にサータ専用のデスクが設けられました。これも駅長からの手配でしょう
とはいえデスクに置いてあるの書類や資料は、整備士関連のみですが…
「サータ。コーヒーはいかがですか?」
『…クダリ、ちょーだい』
「…重症だ。僕とノボリ、間違えてる…」
デスクにへばりつく様にぐったりするサータ、余程疲れていますね。いつもならば、私とクダリを間違えないのですが…
そうです。彼女に届け物がありました
「駅長からコチラが送られてきましたよ」
『あ?』
サータに届けられたのは、大きく平たい箱。恐らく衣装箱でしょう
疲れた身体に鞭打つ様に、サータはゆっくりと箱を受け取りました
『ジジィか、ら………』
デスクに箱を置き、蓋を開けたサータは目を見開いて固まってしまいました。クダリと首を傾げながら、箱の中身を覗いてみると…
「わぉ!」
「これは……」
その中には淡いグレイの、見覚えのあるコートがございました
クダリが風邪で倒れ、サータに代理を頼んだ際に、使われたコートでございます。私記憶力には自信がございますので、間違いありません
「……以前サータが着たコート、ですね…」
『あのクソジジィ…ここまで見越してたな…』
私達の揃いで色違いの、サブウェイマスター衣装一式が、箱の中に収められておりました
駅長は全てを…あのタヌ…失礼…
「グレイのコート!僕達のまんなかの色だ!」
「何か…意味がおありなのでしょうか?」
『……中間色、ね。さしずめ白にも黒にも染まらない、って意味か?ジジィらしい』
成る程、私でもクダリの色でもなく
そして二人の中間にして、どちらにもなれる…という事ですか
『…ノボリ、更衣室どっちだ?』
「あちら、ですが」
『おう』
衣装箱を持ったサータは更衣室に向かい、そして暫くすると……
『こんなもん、か?』
サブウェイマスターの制服に身を包んだサータが、私達の前に姿を現しました
淡い色のグレイのコートを羽織り、同じグレイの制帽を被り、私達とは違うお色の濃紺のネクタイを絞めておられます
整備士長の証である金と赤のピンバッジは、制帽の庇にお付けになられていました
「うわぁ!サータすっごく似合ってる!!」
「大変良くお似合いでございます、サータ。そういうばクダリは、初めてご覧になるのでしたね」
灰色のマスター
(どうなさいましたか?)
(……サイズがピッタリ)
(((……………こわっ!)))
***
駅長は昼行灯
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11.11.19.
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