07-lane

『クダリ。この書類、誤字がある。至急直せ』

「う、うん…」



サータの様子が可笑しい
淡々と必要最小限の事しか喋ろうとはせず、行動もぎごちないでございます

何かあったのかと問い質しても、何も無いの一点張り


……これは、彼の判断を仰ぐ必要がありますね



***



「サータの様子がおかしいだぁ?」

「そうなのでございます、本人は何も無いの一点張りで…」



私は時間を何とか工面し、副整備士長の元に参りました

彼は整備士達の中で、最も古参であり…サータの指導をなさった腕利きで、人望厚い方なのでございます



「……アイツ……ボス達に黙ってたのかよ…」

「何かご存知なのですか!?」



副整備士長は呆れた溜め息を漏らされると、乱暴に髪を掻き毟りられました

やはりご存知でいらっしゃったのですね!



「あー…実はな、整備士長…今日で6日連続徹夜してんだよ」

「………は?」



て、徹夜?しかも6日もですか!?



「いやな。カナワタウン方面行きの列車の一つが、厄介なウィルスを流されちまってな。んで整備士長、ソッチに掛かりきりな訳」

「な、何ですって!?で、ですが何も報告を受けておりませんが…」

「そこがウチの整備士長の、スゲェとこよ」



い、一体どういう事でしょう?

サータが優秀なのは、わたくしは勿論、今やライモンシティの誰もが知り得る事でございますが…



「ウィルスに掛かった列車は、真っ先に整備士長に伝達される。んで整備士長から俺らに報告が入って、侵された列車を速攻隔離。列車のデータを整備士長が、徹底的に洗うんだよ」

「………………」



驚きました
サータはこんな状況を以前から予期し、既に対策を立てていたとは



「列車事態はもう大事無い、だが問題は…」

「…侵入経路と、その対策…でございますね」

「そう言うこった。今、整備士長はソッチに手一杯なのさ」



確かに…ギアステーションのバトル車両は全て自動運転システム、普通列車には補助システムを組み込んでおります

普通列車は手動なので、然程問題はございませんが。バトル車両はそうはいきません


仮にコンピューターウィルスに掛かったら、大惨事でございます



「まぁソコラ辺は問題ねぇ。何せカナワタウン連中のお墨付き貰ってっからな、ウチの整備士長サマは」

「…しかし…6日も徹夜とは…」



彼女の様子が可笑しいのも、6日徹夜していれば当然至極。いえ…倒れてないだけ、奇跡とも言えますね



「俺が言ってもダメだった…ボス、アンタなら出来るかもしれねぇ」

「しかし……」

「なぁに、安心しな。アンタに秘策を授けてやっからよ」

「…秘策、ですか?」



***



「サータ、お休みになってはいかがですか?」

『んー…』



駅長室に戻った私は、サータへ出来るだけ普通に声を掛けました

ですが返ってくるのは生返事だけ、彼女はデスクのPCを睨み続けております…仕方、ありませんか…



『………ん?』

「…………くぅ」

『珍し、ノボリがうたた寝しとる』



副整備士長の秘策
それはサータの前で狸寝入りしろ、との事。しかし効果があるのでしょうか?



『…そういや、寝顔見るのはじめてだな…』



は、恥ずかしいでございますっ!!



『案外、寝顔は可愛いじゃないか』



それは…男として複雑ですね…っ!?こ、これは…もしやサータが私の髪に触れている!?



『うわ、やわらけー。どうなりゃこうなる?俺なんざバリバリに傷んでんぞ』



それは貴女が整備士として、立派に仕事をしているからではありませんか



『ふぁっ…ノボリの寝顔見てたら、眠くなってきたわ…』



はい?眠く?
まさか副整備士長はこの事を見越して…



『…お休み、ノボリ…』



穏やかな彼女の声音と共に、心地良い重さが私の膝に掛かりました。ゆっくりと目を開けてみれば

………サータ…何故私の膝の上で、寝るのですか…



「全く…貴女という方は…」



彼女には以後、徹夜禁止令を出しましょう。副整備士長達もご協力してくれる筈です

ですから、今だけは…



「お休みなさい、サータ…良い夢を…」



疲労困憊

(…ったく。何であの二人は、あぁも似た者同士かね?)
(あぁ、じれってぇ。早よくっ付け)


***
何気に出張る副整備士長


11.11.25.

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