20ーlane

「ユリア、お客様よ」

「だぁれ?」



リリーさんに案内されたのは、母屋の南に位置する角部屋

白を貴重としたその部屋に、母様はいた…


あぁ…何て嘆かわしいの!母様が…こんなに痩せ細るなんて!!



「……只今、母様」

「アータ…?アータ!」



私を見た母様は最初、驚いて少し固まっていたけど…直ぐに私へと駆け出した

そして、母様は私を抱き締めてくれた…あぁ、温かい…



「母様…」

「あぁ、アータ!可愛いわたくしのアータ!」

「母様…」



涙をポロポロと溢しながら、母様は私を離そうとしなかった



「わたくしが間違っていたの、貴女を立派なレディにしようと厳しくしたのが間違っていたの!」

「…かあさま…」



私を、思って?

私の為に、厳しくしていたの?


……私、バカだ……



「アータ!わたくしの可愛い愛娘!どこにも行かないで!!」

「…母様、私が間違ってたわ。私、ちゃんと母様達と話をすれば良かった。そうすれば…こんな事にはならなかった」



自分の事しか考えないで…母様の考えなんて、ちっとも知ろうとしなかった

母様は私のために、って頑張ってくれてたのに…



「良いのよ、アータ。貴女が気にする事ではないわ」

「だからね、母様…お願いだから…お願いだから、姉様を思い出して」



私はもう逃げないよ

だから、母様。お願い、もうサータに私を重ねて見ないで


サータが辛い思いするの、嫌だよ


けど…母様の様子がおかしいのに、私はその時気づかなかった

そして首を傾げながら、母様は衝撃的は言葉を口にする



「あ、ね?何を言うの?わたくしの娘はアータ、貴女だけよ?」

「……え…?」



かあ、さま…なにを、おっしゃって…いるの?



「っ!?ちがうよ!私には双子の姉様が、サータ姉様がいらっしゃるでしょう!!」

「サータ?だぁれ?」



母様は首を傾げながら、目を瞬くだけ

……ウソ……



「かあ…さま…」

『…アータ、そこまでにしておけ』

「サータ、姉様…」



背後から聞き覚えのある声がかかる

振り向くと扉に寄りかかったサータがいた


……辛そうな表情で



「…アータが、ふたり?」

『今の母様の中では、俺の存在が消えちまってる…』



そ……んなっ!?



「でもっ!姉様っ!!」

『お前の気持ちだけで、私ゃ嬉しいよ…アータ』



ゆっくりと私に歩み寄った姉様は、私の額と自分の額をコツンとつける

昔から、私を慰める時に姉様がしてくれた仕草


……でも、そんなのってないよ…



「…………ねぇさまぁ…」



すごく辛い筈なのに…姉様は、何事もなかったかの様に

……綺麗に私へ、微笑んでくれた



『ありがとな、アータ』



消えた面影

(…アノコは、だぁれ?)
(アータ、に似てる?でも、ちがう……あのこは…ちがうの…)


***
重い…暗い…


11.12.21.

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