16-lane

『ふぅ…』

「お疲れ様でした、サータ」



バトルが終わったサータを、私はホームで出迎えました
幸運な事に私の挑戦者は、前車両で下車なられましたので



『おつかれ…』

「やはりサータはお強いでございます」



各サブウェイマスターのバトル中継は、ホームでも拝見出来る仕組みになっております

勿論他のお客様の御迷惑にならない様に、専用スペースを設置済みでございます



『お前が言うか、ノボリ…』

「……サータ?」



おや?どうした事でしょう…

サータの様子が可笑しいでございます


視線が私と合わずに虚ろで、彼女には珍しく呆ける様な仕草…



『……………………』



まさか…私、嫌な予感がいたします



「サータ、失礼します」



彼女の制帽を素早く奪い取り、私は額に手を当ててみました



……………………………



「付かぬ事をお聞きしますが…サータ。貴女…本日で何徹でございますか?」

『…………ごきん』



あぁ!やはり!!
通りで様子が可笑しいと思いましたっ!



「サータ!あれほど徹夜をしてはいけませんと申し上げたでしょう!!」

『…や、め、あたまに、ひびく…』



当たり前でございます
貴女。今御自身の身体がどうなっているか、自覚していますか?



「自業自得でございます!!」

『あぅ……』



最近の急激な冷え込みと疲労
恐らくソレが原因でしょう…

こんな高熱で、よくバトルが出来たものです…


歩くのもままならないサータを、私は躊躇無く抱き上げました



「申し訳ありません!道をお開け下さいませ!」

「サータさんっ!?」



ホームを走る事はいけない事ですが…今回は緊急事態と言う事で

私が乗客の皆様へお声を掛けると、皆様はこぞって道を上げて下さりました



「おぉい、皆!道を開けろー!サータさんがまた倒れたぞー!!」

「サータさーん!大丈夫ー?」

「早く元気になってねー!」



……………………………



「……最早、名物になっておりますね」

『……………おおぅ』



彼女が倒れたのは、今回が初めてではございません

その重責上、度重なる無茶をしては何度も倒れられていました。その度に運ばれていましたので、当然と言えば当然でしょう…



「サータ!ノボリ!」



私はサータを連れ、駅長室へと駆け込みました



「クダリ、準備は?」

「バッチリ!」



すると背後からアータ様が恐る恐る口を開かれました



「…医務室の方が、良いんじゃ…」

「医務室よりこちらの方が近いのでございます」

「サータ、良く倒れるしね」



本来ならば医務室の方が宜しいのでしょうが、生憎とサブシングルトレインからは遠い距離にあるのでございます



「……ね、ちょっと良い?」

「ん?なに?」



仮眠室のベットに横たわるサータの額に、濡れたタオルを置きました



「全く…」

『すまーん』

「済まん、ではすみません!」



これで何度目と思っていらっしゃるんですか!?

おや、クダリ?貴方、それは一体…
クダリが持ってきたのは風邪薬ではなく、湯気立つ湯飲みでございました



「サータ、はいこれ」

『………こりゃ…』



目を瞬くサータは湯飲みに一口付けると、表情を綻ばせました

そしてゆっくりと、視線を仮眠室の扉へと向け…



『アータ、おいで』



扉に隠れて見ていたであろう、アータ様へ優しく声をお掛けになられました

アータ様は戸惑いながらもベットへ歩むと、サータは彼女をクシャリと優しく撫でられましたでございます



『ったく…成長してねぇと思ったらしてんじゃねぇか。母様の特製飲み薬、作れるとはな』

「………サータ」



そのお優しい笑みは、私達が見た事のない慈愛に満ちたもので

二人の蟠りが消えていった様にも見えました



『母様に、会いに行く。気持ち整理しとけ』

「うん」



交わる心

(…………ノボリ、サータ)
((あ?/はい?))
(バトルトレイン総点検で、ぼく達三日間連休だって…駅長が…)
(はぁ?)
(…駅長…貴方様はまた…)


***
ホントは良いこなんです


11.12.13.

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