14-lane

「サータ」

『……ノボリ』



私は、シングルトレインに向かう彼女を呼び止めました



「途中までご一緒しましょう?」

『…気を、使わせちまったな…』



並んで歩み出し、私達は乗客の方々に分からない位小声で話しました…内容が内容でございますから

サータの声音は、どこか沈んだお声でした…いつもならば、張りのある凛としたお声なのですが…



「お気になさらないで下さい。私がしたいだけでございます」

『…アータは、ガキの頃から病弱でな。それもあってか、両親が溺愛してよ』



薄く目を細め、彼女はゆっくりと語り始めました

……そういえばサータが、過去を話して下さるのは初めてでございます



「そうで、ございましたか…」

『対する俺は昔からコウでな、親の期待をまぁ…裏切る形を取ってた。多少は期待に応えてたが』

「……………」



彼女は確かに強い…皆様は口々に申されます。ですが私は、そうは思えません



『イッシュに引っ越す、っーのもアータの身体を治す為だった…分かってはいたんだよ、分かっては』

「…サータ…」



彼女は強くありません

期待に応えられる様に、必死に自分を作り上げ、今の彼女がある。私達は本当のサータを知らないだけ…

恐らく本当の彼女は…



『実家に俺の居場所はねぇ…私の存在が消えてるから…』

「何を仰るんですか、サータ。貴女の居場所はココにちゃんとありますよ」

『…ノボリ…?』



本当のサータは弱い方
それを隠し通し、色々な重圧に耐えて来たのでしょう


ですがサータ?気付いていますか?

今の貴女、今にも泣きそうなお顔をしていらっしゃいますよ



「誰も見ない?少なくともわたくしは、ちゃんとサータを見ています。サータの存在を、認めております」

『………っ………』



貴女は一人ではありません

苦しいなら、頼って下さいまし
悲しいなら、分けて下さいまし

それが仲間というものでございましょう?



「ですから、一人で苦しまないで下さいまし。辛い時は、寄り掛かって下さいまし」

『…………ばか、のぼり』



何とでも仰って下さい



「バカで結構。それでサータ…貴女の苦しみが、和らぐならば」



安らぎ

(…行ってくるよ)
(行ってらっしゃいまし。存分に楽しんで下さい)


***
よーやくらしくなった…


11.12.09.

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