06
『そういやバルバットに行くんだって?国王とジャーファル様と』
「…何で知ってる?」
何時もの情報交換時
ふとバルバット行きを思い出し、口にしてみた
『ジャーファル様本人から聞いたのさ、ついでに補佐官任命』
「……補佐官?あぁ、アイツ間者だったな」
『気付いてたんかい』
「先輩に言った」
成る程ね
マスルールのお墨付きなら、ジャーファル様も国王も踏み出すわな
『バルバット、か』
「…懐かしいか?」
『まね』
俺の素性を全て知り得るのは、王宮内でもマスルールただ一人。コイツ並の高身長から見下ろされたら、嫌でも話せざるを得ないっーの…
『どっちかってぇと、懐かしさより悔しさの方が強いな。世話になった方に恩返し出来なかったからさ』
「………アスラ」
右も左も分からない同時の俺に、手を差し伸べて下さったのは"あの方"だ。俺を手厚く保護するだけなく、父親代わりと思えば良いと豪語し、養子にまでして下さったというのに
俺は結局、何も出来なかったんだ…何も…
「…………」
『マスルール』
温もりと、無骨な手の感触
気づけば何故か、マスルールが俺の頭を撫でてた
「ん?」
『気持ちは嬉しいがな、如何せん痛い』
コイツなりに励ましてくれてんだろう…が、力加減が上手くいってねぇから、いってぇ…
「…………スマン」
『いや、謝る事はない』
寧ろ謝るのはコチラの方なんだが…気まずさからつい、顔を伏せてしまう
「アスラ」
『なに?』
「ん」
呼ばれて仕方なく、ゆっくりと顔を上げる。視界に写ったのは、マスルールではなく…紫色
『………ペンダント?』
「お守り代わり。アスラ、良く無理するから」
マスルールの手元から下がるペンダントに、一瞬言葉が途切れる
ペンダントはシンプルだが、金色の台座は上品な造りになっていた。中央にはめ込まれた紫水晶が、光に照らされて淡く、優しく輝いている
『悪かったな』
くれる、のか?
コレまさかとは思うが、お前が買ったのか?紫水晶の石言葉なんて知らない、よなぁ…
恐る恐るマスルールから受け取り、首元に掲げてみる。すると珍しくマスルールが小さく笑んだ
「似合ってる」
『………サンキュ』
天然て怖い
国王並のタラシだ、コイツ
『……無事に帰れよ』
「ああ」
6夜 紫水晶に託されし願い
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紫水晶/アメジスト
石言葉は誠実・心の平和・高貴・覚醒・愛情