05

「アスラ。少々宜しいですか?」



市中の"防壁"作りも終わり、漸く通常業務へ戻った。とはいえ、王宮務めと"本職"の二足のわらじだが…最近は協力してくれる人達が増えたので、以前と負担の量が断然違うようになった

そんな折、上司のジャーファル様から声を掛けられた。はて、何かしたか?



「貴女に話しておかなければならないことがあります」



声音が何時もと違う
普段と変わらぬ表情なのだが、瞳と声音は何処か真剣なもの



『場所を、変えましょう』



所変わって王宮裏手
此処は滅多に人が通る事がない、こういう時に最適な場所である。因みにマスルールと話をする時も、ここを使っている。本当に誰も通らねぇんだよココ



『…お話、を』

「そうですね。近く、私とマスルールが暫く不在となります。シンの護衛として」



言葉に何か引っ掛かる
国王の護衛?てぇと何だ、国王はもしや国外に出掛けるって事か?



『国外、へ?』

「流石アスラ、ご明察です。貴女はバルバットをご存知ですか?」

『はい』



知ってるも何も、俺が一番最初に来たのはバルバットだ。そこで"あの御方"に出会わなければ、俺は路頭に迷い、戸籍もこの世界の知識すら得る事は出来なんだろう

しかしバルバット、か
先王は御隠れなされ、確か今は長兄が跡を継いだと聞いている



「暫くそのバルバットに赴く事になりました。つきましては暫定的ですがアスラ、貴女に私の補佐官に任命…不在中の留守をお願いしたく」

『………………は?』



いやいやいや、ちょっと待て
一応位置的には見習いの筈なのだが



「驚くのも無理はありませんね。ですが貴女の能力なら問題なし、と私とシンが独断で決めさせて頂きました」


つか何故俺?
ジャーファル様には補佐官がいた筈………あぁ。そういやあの補佐官、間者みてぇな動きしてたな。実際間者なんだろうが、素人に毛が生えた位のレベルで笑いを堪えるのに苦労した

あの程度、俺は幾ばくもしない年にゃ出来ていたからな
てぇと。今回の俺の抜擢は間者を炙り出す為のワナ、と…囮は足が付かない方が良いからな、ジャーファル様が進言したクチだろう

確かこの人、元々暗殺者だったらしいからな



『………因みに、拒否権は?』

「あると思いますか?」



ないっすね
まぁ普通なら、上司命令なら仕方ないと思う所か
後で"あの二人"に間者の情報流しておけば、体よく何とかしてくれるだろう



『承知、致しました』



5夜 新たな導き


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