21

「さて。説明して貰おうか?」



謝肉宴が無事終了したのを見届けた俺は、気配を消してその場から離れようとした…のだが。マスルールとジャーファル様に捕縛され、あれよあれよと気付いたら周囲は王と八人将様とアリババ達に囲まれていた

…わぁお。逃げられねー



「君は一体何者だい?」



代表してシンドバッド王が口を開く

アリババは顔を伏せ、沈黙したまま



『正式な自己紹介が遅れた事、平にお許し下さいませシンドバッド王。我が真の名は、アスラード・サルージャ。アリババは私の弟でございます』

「アリババ君の姉君…つまりはバルバッドの姫君か…初耳だな」



そらそうだわ
バルバッドで俺の存在を知り得たのは、極一部の連中達だけ



『私はアリババと違い、王族の血縁ではこざいませぬ。故に存在を公表されておりませんでした』

「……養子、か」

『お察しの通りで』

「では再度問う。アリババと同じ宝剣を何故、君が持っているのだ?」



やはりこの問いが来たか
まぁ来るとは思っていたが、案外早かったな



『こちら、ですね』



腰元から取り出した短剣に、皆が息を飲む



『アリババ、こちらへ』

「あ、はい!」



突然呼んだ為か、アリババは慌てて俺の元に駆け寄る

…少しは落ち着けや



『アリババ、お前の宝剣を見せておくれ』

「…は、はい…」



戸惑っとるなぁ、まぁ仕方ない
自身の宝剣とアリババの宝剣を並べる様に翳す。気付いたヤツは既に気付いただろう



「…同じ、ではない?」

『流石ジャーファル様、ご名答。この宝剣は元々一対の、対極の宝剣。見掛けは似ている様で、実は異なる双子剣で御座います』



元々俺達の宝剣の扱いは、本来の扱い方と異なる
確かにこれはバルバッド王家のみが所有出来る宝剣だが、実際は国王と王妃が持つのだ

それをポンと、しかも他人へ預け渡してしまうなんて…先代国王らしいといえばらしいな



「そう、だったんだ…でも姉上も持っていたのは驚いたな…」

『ああ…世界に旅へ出る時に、父上が持っていけと無理矢理持たされたんだよ』

「え?」

『今思えば、この為だったんだろう…全く相変わらず抜け目無いというか、策士というか…』



先代国王もとい、父上は先を見通す事に長けていた。私を養子に迎え入れたのも、バルバッドの双剣をシンドリア王に預けたのも…恐らく現在を見越しての事だろう

今更だが、末恐ろしい親父だよ



「そこの姉弟ー?仲が良いのはじゅーぶん分かったから、頼むから話を脱線させないでくれよ」

『「あ……』」



しまった
久しぶりだからつい



「まぁとにかくだ、アスラはバルバッドのお姫様って訳だ」

『戸籍上ではそうなります』

「…戸籍上?」

『ええ、私自身王族の出ではありません。更に言いますと、政治その他諸々の権限を全て放棄しております』



これは当然の処置だ
元々一般市民の括りな俺が、何故んな権限を持つ必要がある?養子だとしてもだ、だからこそ全ての権限を放棄したんだ…面倒臭い事は悪魔退治だけで充分だっつーの



『これからも、お変わりなき様お願い致します』



21夜 真髄



多少捏造

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