15
王が帰還され、数日が経過
それと同時に新たな風が、王宮内に吹き抜ける
それは半年前に迎えた食客・アラジンとアリババが"漸く"、動き始めたからだ…正直あのマシュマロ体型な二人を、俺はもう見たくない…
それはおいといて
アラジンにはヤムライハ様が、アリババにはシャルルカン様が師事する事になった
マギであるアラジンに師事?と疑問を覚えるかもしれないが、彼は魔法の魔の字も知らない無垢な原石。ヤムライハ様なら彼の未知なる才能に気付く筈だ…ただ全うな師事が出来るかは別だが
アリババに関しては、剣術の向上以外の何物でもない。王宮剣術は使えるものの、彼の技量は現場で何とか使える位のレベルであり、才能はあっても経験を積まなければどうにもならない状況だ
因みにモルジアナは彼等とは違うので、きちんとマスルールに師事を受けている
『ふむ…』
若き世代が高みへ昇ろうとする光景は、いつ見ても高揚とさせてくれるな。だが彼等に心配の種を増やしてはならない
確実に彼等に迫る魔の手、それは対立する勢力だけではなく、"悪魔"達とて同じ事。若き世代の強い意思は、悪魔達にとって格好の餌だからだ
『少しばかり、警戒を強化しておくか』
アル・サーメンの事もある
王宮周辺に新たな"防壁"を展開させておいても、無駄にはならない筈
「何が、だ?」
『……いつからいた?』
「さっきだが」
マスルール君…本当に君はいつの間に、気配を消すというスキルを覚えた?心臓に悪いったらありゃしない
「いや、覚えてない。寧ろアスラが考え込んでただけ」
『ん?もしかして、口にしてた?』
「思い切り」
うわ、やっちまった…
珍しく眉間に皺を寄せるマスルールに、口元が引き攣る。これはどうも怒っているようだ
「無理は、しない」
悪ぃなマスルール
無理と無茶は俺の十八番でな…それに、今回はそれなりの理由がある
そう、"理由"がな
『分かったよ』
(とは言ったものの)
(アスラの事だ、無理するだろう)
(何故俺を頼ろうとしない?そんなに俺は…力不足なのか…)
15夜 無理と不安と焦燥と