13
国王が煌帝国へ行って、早一月以上
今回の一件はバルバットだけに留まらないだろうとの見解なので、長引くのは仕方ないだろう
「アスラはいるか?」
『…ドラコー、ン様?』
珍しい
将軍がこの白羊塔に来るなど…何かあったのか?
『どうなされましたか?』
「お主、やはり忘れておるな。今日は"鍛練"の日であろう」
『……………あ』
いっけね、忘れてた
ヒナホホ様同様、ドラコーン様は俺を受け入れて下さった一人
何でも嘘偽りない、強い意思の光を秘めた瞳を持つらしい俺を只者ではない、と感じ取ったらしい…てかどんな瞳?
『ス、ス、スミマセンッ!』
「いやいや、構わぬよ。お主がここ最近多忙だったのは、私も耳にしている」
将軍かっけぇぇっ!
俺武官だったら、将軍に付いていってるわ!
「アスラー!こっちは何とかなるから行ってこーい!」
『え、マジ?』
先輩の声が遠くから響く
書簡の山から響く声は尚も続いた
「今日締切の書簡類いは片付いてんだろ?なら行けよ、後は俺達に任せとけ」
その言葉に辺りを見回す
他の文官達も先輩の言葉に同意と言わんばかりに、笑みを浮かべながら頷いている
『…………っ』
「良い仲間を持ったな」
『はいっ!じゃ皆、悪い!行ってくる!』
***
所変わって
ここは将軍配下の人達が良く使用する場所だ
「将軍どちらに…アスラ?」
「ホントだ!嬢ちゃんじゃねぇか、久々だなぁ」
「今日は"鍛練"の日だったか…嬢ちゃん、忘れてたクチだったろ?」
『アハハ…』
俺は将軍にある頼みをしていた、それは月数回で良いから"鍛練"をして頂けないかというもの
文官はデスクワーク、身体が鈍っては"本職"に支障をきたす恐れがあるからだ
勿論将軍も最初は反対したものの、今では俺の実力を理解してくれているし、部下の方々も気さくに話しかけてくれてる
「アスラ嬢、忘れモンだぜ」
『いっけね』
手渡されたのは官服、ただし武官ものだが
「うむ…アスラのその格好も久々だな」
武官の官服を羽織った俺の姿に、将軍は目を細める
流石に文官の官服のまま鍛練は出来ず、まさか俺が武官に混ざって訓練してるとなると、問題になる可能性もある
それを全て解消する為の官服、という訳。頭には軽くターバンを巻き、片方の目に眼帯をする…という徹底振りだが、今の所バレてない
『では宜しくお願いします!』
「有無、掛かってきなさい」
13夜 武を心得る者