11
第三者視点「アスラ様、少々宜しいでしょうか?」
『ん?君は黒秤塔の女官の…』
お帰り支度をなされているアスラ様を引き留める為、お声を掛けた
文官として類い稀なる才能を持つアスラ様は、私達女官の憧れ…そんなアスラ様が私などを覚えて下さっていたなんて光栄です!
ではなくて。本題を…
「あの…不躾で申し訳ありません!マスルール様との噂は誠なのでしょうかっ!?」
『………噂?』
王宮に広がるお二方の噂
私はこの噂が真実か否か、他の女官から聞いてくる様良い使ったです。くじで負けてしまった為に…くじ運ないのかしら私?
私の事はともかく
アスラ様のご様子がおかしい。目を見開かれて、お口が開いたままに…あぁ貴重なお顔が拝見なされて嬉しゅうございますー!
『噂って…マスルールとと私の噂があるのかい?』
「ご存知、ない?」
『ない。というか、噂云々に興味がないから』
まさかの、展開です!
ご本人が噂をご存知なかったなんて…先程の反応にも納得できますね
『ソレってどんな噂なんだい?』
「え…」
『えじゃなくて。君は知ってるんだろ、その噂』
「え、えぇ…私だけでなく恐らく、王宮で知らぬ者は少ないかと…」
お二人のお噂は王宮内に瞬く間に広がりましたから、逆に知らない方が希少な筈です。色々な噂を聞いて参りましたが、こんなに早く知れ渡った噂は初めてでは?
ですがやはり王宮
噂に尾ひれはつきもので、内容が恋仲系なので余計です
『んで。どんなの?』
「そ、それが……"アスラ様とマスルール様は将来を誓い合った仲"、とか"既に夫婦"とか…」
『………尾ひれが付くにも限度があるだろ……』
予想以上だった噂の内容に、アスラ様は思わず呆れながら盛大にため息を漏らしました
確かに内容を聞く限りでは少しばかり無理なものもありますが、普段のお二人から出た噂なので何とも…
「では噂は…」
『根も葉もないデタラメ。つかマスルールとはそんな関係じゃねぇよ』
だ、断言されますか…
「そう、なんですか?お二人共砕けた口調でお話していますし、呼び捨てで呼んでいらっしゃったのでてっきり…」
『あー…アイツとは年近いからさ』
そう言われてみれば、お二人はお年が近い方々でしたね
ならば気が緩み、口調が砕けてしまうのも納得します
『つか王宮にんな噂があったのか…知らなかったわ』
「……………」
『ん?どした?』
「い、いえ!何でもございません!私こそ不躾なご質問、失礼致しました!」
(無自覚なのかしら?)
(マスルール様の事を話してるアスラ様…)
(やだ、アスラ様可愛い…)
11夜 ある女官と補佐官