08
ジャーファル様達がご帰還なされた
今回はバルバットの国事態を変えた様なものだ。流石に皆、疲労が隠せていない
『お帰りなさいませ』
「アスラ」
表情には現れていないが、俺には気配でバレバレだ
ジャーファル様が戸惑っている
『恙無く、全ては穏便に』
「そう、ですか…」
彼は俺が間者の事を知らないと思っていた。だからこそ生まれる戸惑いであり、一層疑心が高まるだろう
とはいえ。こっちは疑われる事に慣れちまってるからな、別になんて事はないが
「嫌な役目を負わせてしまいましたね」
『ジャーファル様がお心を痛ませる事はありませぬ』
「そう言ってくれると、私も助かります」
淡々と流れる様に続く会話だが、それも互いの腹を探り合う目的も含まれている
抜かりはない
「バルバットの報告は聞いていますか?」
『全て聞き及んでおります』
霧の団、国政の悪化、王政の廃止
聞いた時は多少驚きはしたが、混乱を起こす事柄ではない。寧ろあの悪政だ、選択肢としては正解だろう
「シンは暫く不在になります、付きましてはアスラ。貴女を補佐官として、正式に任命しようかと思うのですが?」
『………正式に、ですか?』
今まで暫定的な補佐官、という位置的だった俺が、正式な補佐官に?
だが声音を聞いている限りでは、強制ではなさそうだ
「貴女の事は報告で全て聞き及んでおります。私達が不在でも、しっかり文官達を纏め上げた様ですし」
『纏め上げたなど…皆さんのご協力があってこそ』
「謙遜しなくても良いですよ?」
粘るな
正直補佐官任命は暫定的だったから受けたのだ、これが正式な任命となれば話は別だ
俺には"本職"がある
その仕事と平行する以上、並の文官で良い。補佐官なんぞやったら、身体が幾つあっても足らん
「直ぐに返事が貰えるとは思ってませんよ、ですが考えておいて下さいね?」
面倒なフラグが立ったもんだ
『…はい』
8夜 見合う官職