07
さて、補佐官に任命されて暫く
文官の間ではかなり戸惑いがあったものの、国王勅命という名目があった為か、目立った混乱は起きなかった…表向きは
『ここに誤字、直して提出お願いします。期限に余裕がありますので、焦らず』
「はい」
「アスラ、この文献の翻訳はどうする?」
『急ぎだったら優先、期限に余裕があったら後回しで』
「あいよ」
比較的皆が協力的なので、俺としてもやりやすくて助かっている。勿論仕事に妥協は許してない
ただそれも、一部を除いてだが
『お疲れ様です。本日の業務は終了です』
「アスラ」
終業の鐘と同時に俺へ声を掛けたのは、文官でも古参の先輩。彼は俺の補佐官任命話に世辞無しで喜び、受け入れてくれた器のデカい人だ
そして何より、俺を王宮へ推薦したのはこの人だったりする
「疲れてる所悪ぃな、"アイツ等"の事なんだが…」
『…あぁ…』
突然見習いが補佐官に任命された
これは国始まって以来の快挙らしいが…これに反発しない人が全くいない訳がない
表向きは何事もない様に見繕ってはいるが、俺への当て付けか。仕事を放り出しているのが現状だ…これがジャーファル様に知られたら、大目玉間違いないな
「アレは他の連中にも悪い影響を出す、手を打つなら今のうちだ」
『分かってはいる。だが"アイツ"も事がある』
「…確かに」
目下、俺の問題は前・補佐官殿だ
彼が間者という事は、先輩も薄々感付いていたらしい。そんな彼がジャーファル様達不在後から、不穏な動きを見せ始めたのだ
勿論この事は八人将のドラコーン様やヒナホホ様にも、情報をリークして警戒して貰っている
『物的証拠が無い以上、間者として問い詰められないのが現状だ。もう少し泳がせて証拠を出させ、一気に捕縛する予定』
八人将のお二方とは、既に粗方打ち合わせ済みだ。このまま連中を油断させて、炙り出す事で合意となった…まぁ多少、危ない橋を渡るが仕方ない
『文官の間で混乱起きるかもしれんな』
「フォローは任せておけって」
『頼りにしてます、先輩』
我々の主に哀しみの表情は似合わぬ
シンドリアを敵に回した事を、後悔させてやろう
7夜 隠れた軍師