あの時、見上げた青空は、憎たらしい程に真っ青だった




―見上げた空は、真っ青で―




世界の命運を賭けた、あの合戦から数ヶ月後

季節は冬を迎えた


都内の至る所がクリスマス一色の中、私は休みを貰い【ある所】を目指している



『(健二と夏希は…クリスマス、デートすんのかね?)』



あれから健二と夏希は、本当の【彼氏彼女】に昇格。その為だろうか、最近健二や夏希からのメールは、やや惚気気味だったりする


辿り着いたのは、海が一望出来る穴場スポット。流石に冬だからか、周囲には誰一人いない

少し伸びてきた髪が、潮風で靡く



「おぉい!」

『理一さん、お久しぶりです』



聞き慣れた声が背後から聞こえた。振り向くと私服姿の理一さんが、こちらに駆けて来た


……去年の夏の一件後から、一応私達は【お付き合い】と言うのをしている

が。互いに自衛官であり、また勤務先が離れている為に、中々会う機会が無い



「スマン、遅れた…待ったか?」

『いえ、時間ピッタリです』



理一さんは穏やかな笑みを浮かべると、私の頬に手を添えた



「本当に久しぶりだな…暫く見ない内に綺麗になって」

『……理一さん……』



彼は……たまにこうやって、素でサラリと恥ずかしい台詞を口にする

素で言うもんだから、こちらとしては堪ったもんじゃない



「ははっ、済まない。でも本当の事だからな?」

『……全く……』



彼の穏やかな笑みと言葉に、顔に熱が篭る。悟られまいと、視線を空へと上げた


そこには何処までも真っ青な青空が



『………あの時の、空みたい』



大切な、あの人がいなくなったあの日も…こんな青空で

感慨深そうな表情で、理一さんが頷く



「………あぁ、似てるな…あの日の空と…」



ゆっくりと、私の肩に彼の手が置かれる。基本、理一さんは人前ではベタベタしない。手も繋がないし、腕も組まない

本人いわく【年甲斐もなく、恥ずかしいから】だそうで


…んな事を言ってるけど、二人きりになると引っ付いてくる。このギャップも、私の悩みのタネの一つになりつつあった


今回ココを待ち合わせ場所にしたのも、理由はそれだろうなぁ…



「今日、何処行くか決めたかい?」

『…実はまだ迷ってたり』

「コラコラ…」



実は今日、私達は会う予定ではなかった

だがお互いクリスマス当日に、どうしても抜けれない仕事があると判明。折角だから別の日に埋め合わせしよう…となり、今日に至る



『……じゃ、理一さんのマンション』

「え゙っ!?」

『折角だから、ね?』



してやったり、という笑みを見せると、理一さんは苦笑を浮かべる



「出掛けなくて、良いのか?」

『その分、私が御馳走作ってみせましょう!』

「君の料理は美味いんだよなぁ。母さんもベタ褒めした位だし」

『…んじゃ決定?』

「…分かったよ(俺、理性…持つ、か…?)」



差し出された理一さんの手を、私は躊躇無く取った



物語は――これからも綴られていく



真っ青な空が何処か、あの女性(ひと)の笑みに見えた



―――――――
SW企画提出用作品

天然タラシで、周囲の目を気にしつつ、夢主の尻にひかれる理一さんに(笑)

…あれ、予定と違う様な…

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