#35.5

戦国時代
其れは誰も知り得る史実であり、過去

私は幼い頃から覚えている記憶があった、それは"もう一人の私"の記憶。片方の目を眼帯していて、剣を持ってる。幼な心にその記憶は恐ろしく、誰にも話す事は無かった

側に居た筈の両親は、いつの間にか姿を消した。恐らく私は親に捨てられたのだろう…サイコキネシスのネクストを持つ子供だ、気味悪いのを通り越して畏怖したのが目に見えた。そして私は齢四歳にして、孤児となる

だが一人になっても、苦しいが何とかなっていた
何故なら"恐れてた記憶"が、私を生かしたから。苛酷な環境な筈なのにも関わらず、"記憶"には生き延びる術があり。その"記憶"を頼りに、私は命を辛うじて繋ぎ止めていた

そんな生活を繰り返して幾年が経った頃、ある男が私の元を訪れた。大きく立派で、鍛えられた体。厳しそうだが、どこか優しげな表情に懐かしさを覚える。この男とは初対面の筈…なのに何故懐かしいと思う?


「…矢張、お主だったか…」
『誰だ、アンタ』


男は目をまん丸に見開く
何故そんな反応を?私はアンタを知らない…筈。すると男は大きな掌で、私の頭をクシャリと撫でた。いや…正確には撫でたと言うより、押したと言った方が正しい


「儂を覚えておらぬか?」
『覚えてだと?何を言ってんだ、オッサン。アンタとは初対面だが』
「ならば…"記憶"はあるかのぅ?己には覚えがない、"もう一人"の記憶は」


なぜ、知っている?
誰も知らないのに、私を捨てた両親さえ知らない事なのに


「思い出せ、魂は覚えている筈じゃ」
『たま、しい…?』
「そうじゃよ。お主はこんな所で、朽ちる様な者ではあるまい?のぉ、独眼竜や?」


独眼竜
その言葉を聞いた瞬間、まるで雷に打たれた様な衝撃を受ける。同時に次々と鮮明に、身体の奥底から"魂の記憶"が蘇ってくる

嗚呼、そうだ
何故忘れていたのだろうか、私は…"戦国武将"だ。身体中が熱く滾る、これは婆娑羅?


「思い出したようじゃの」
『虎のとっつぁん、か?』
「有無」


眼前にいる男を良く見てみれば、それは"過去"に俺の**だった御方で。というか俺達死んだでしょ?何で今さら人生やり直しみたいな事………まさか…


『まさかとは思うが…生まれ変わりとか?』
「流石疾風の独眼竜じゃ、聡明な所はとんと変わっておらぬ…ご名答じゃ」
『げっ!?』


稀有な人生を終えた後も、稀有な人生を送れってか?


「のぅ、独眼竜や」
『Ah?』
「主さえよければ、儂の養子にならぬか?」
『……………マジか』
「マジじゃ」


養子、か。今の私は身寄りがない、虎のとっつぁんに迷惑をかけないだろうか?外見からするに、身を固めてる筈だから奥方は嫌がるのではなかろうか…


「独眼竜よ、心配無用じゃ。儂の妻は既に承諾しておる、寧ろ娘が出来ると喜んでおったわ」
『早っ!行動早っ!』


奥方説得済みかよ!本当に昔から行動早ぇ…


「儂と、共に来ぬか?」


一人だった私には、差し出された掌が救いの手の様に見えて。無意識の内に私は、その手を取った

それからあっという間に養子縁組が進み、武田姓を名乗る事になる。奥方様は私を気遣ってくれる、とても優しい方で。本当の母親の様に接してくれたのが、心地良く擽ったかった。何より驚いたのが、虎のとっつぁんが刑事だっー事だよ。まさか部下に殴り愛とかしてねぇよな?

戦国武将としての"俺"
現代に生まれた"私"
どちらも"同じ"と、二人は説いてくれた。それが一番、何より嬉しかった

まぁ多少難はあるとは思うが…楽しんで生きてみようか


昔物語

(それは昔、昔。過去の話)

***
夢主視点、独白
彼女の過去をここいらで暴露


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