#31

『まさかまたテメェのツラを拝む事になろうとは、な。息災そうで反吐が出るぜ』


凛々しく登場した独眼竜…もとい椿なのだが、銀河の母親を見て開口一番がコレ

こっえぇー!
何が怖いって爽やかな笑顔で淡々と毒を吐くトコ!鳥肌立っちまったよ、オジサン…


「あ、アンタ…」
『二度とツラを出すなと、言っていた筈なんだが…何故ここにいる?』
「アンタが!アンタが全部狂わせたのよっ!」


淡々と冷静な椿に対し、女は突然我を忘れた様に叫ぶ。何も知らねぇ連中は言葉を無くし、俺は吐き気がした

自分が何をしたのか、全く理解してねぇな…コイツ


「アンタさえ…アンタさえ居なければ私達、母子は幸せだった!」
『………』
「アンタが…しゃしゃり出てこなければっ!」
『……言いたい事は、それだけか?』


冷たい声音が、辺り一面に響く。氷の様な椿の雰囲気に、誰もが息を呑む

鋭い眼光、冷たい声、纏う空気さえ違う。その姿はさながら…


「戦国武将みてぇ…」


何故か俺の脳裏を過ったその言葉。それが妙に、シックリくるから不思議だ

椿の服装事態がソレらしいっーのと、日本刀を腰に差してるのも…俺がそう思う理由かもしれねぇ


『テメェの考えなんざ、俺の知った事か』
「っ!!」
『それよか俺の問いに、とっとと答えやがれ。何故この場にいる?テメェは"出歩く事が出来ない"筈だが?』


どういう事、だ?
銀河の実母に関しての情報は俺も少ねぇ、知っているのは多分氷山の一角みてぇなもんだろ

だが出歩く事が出来ねぇっうのは…?


『そうだった筈だ…違うか、ユーリ監査官?』
「貴女の仰る通りだ」


あれ?監査官?椿と知り合いだったの…オジサン初耳


「さて、何故貴女がここに居るのはさておき。銀河君を引き取る権限は持ち合わせていない事は、十二分に承知していらっしゃる筈」
「違う!違うわ!」
『五月蝿い、黙れ』


しかし何だ…実母は精神イカれてんのか?様子を見る限りじゃ、正常と言いがてぇ…


『法的措置の元、銀河の親権は俺にある。それは管理官が証明してくれる…何せ当時の裁判官だからな』


なぁるほどね
管理官は裁判官でもあったっけな…て事は、管理官は椿側だったんだな


「そんなのデタラメよ!銀河は…その子は私の子よっ!」
『その息子に手を上げてたのは、何処のどいつだ?あ?』


場の空気が凍る
この女は有ろう事か、自分の息子に手を上げ…しかもそれを自覚してねぇときた。そりゃ親権も剥奪されるわな


「貴女のしていた事は、全て立証されています」
『テメェは精神病院っう監獄で一生を終える筈だった…なのにも関わらず、何故この場にいる?』


だから"出歩く事が出来ない"か、漸く話が繋がった。しかしそうなると、どうやってこの女は会場に来れたんだ?

俺達に口を挟む権限は無ぇ、誰も静かに二人を見守るだけ


「"メシア"様が、助けてくれたの」
『Ah?』


突然実母の口元に、歪みを含んだ笑みが浮かぶ。椿は訝しげに睨むと、実母は狂った様に高笑いを始めた


「あはははは!アンタには分からないわよ!あの方がどれだけ偉大か!私はあの方に"力"を頂いた!これがあれば、アンタなんて!」
『誰か理解するか。ま、そりゃそうか…死人を駒にすればテメェは楽、出来るんだからな』


……は?椿さん?ちょ、待ってくれ。その能力は…


「あら?気付いてたの?」
『伊達に独眼竜は名乗ってねぇんだよ』


一層低く冷たい声
その瞳は怒りを孕み、険しく細める


『今回の一件、黒幕はテメェだ』


その言葉に誰もが息を呑み、言葉を失った



(……マジか?)
(ウ、ソ……)


***
虎視点
暗い、暗い!


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