#30

「ち、ちょっと待て!」


重苦しい空気を突然、取り乱した声音が破る。それは俺の横から発せられた


『何だ、虎徹?』
「それって楓と銀河も参加しねぇとダメなのか?」


虎徹の気持ちは分からなくもない、俺も二人をそっとしてやりたいとは思ってはいる

だが現状は、んな甘い事言ってる場合じゃねぇ


『悪ぃな虎徹。二人には協力して貰わねぇと駄目だ』
「…」
「なら私は舞台を用意すればいいのかしら?」


流石敏腕プロデューサー
自身の成すべき事を、確り把握してくれている。仕事の出来る人は嫌いじゃねぇよ、俺


『ああ、頼む。それと貴女の息が掛かるメディア…記者とかいるか?』
「何人か頼めばいるけど?」


アニエスは首を傾げながら、目を瞬かせる。勿論他の連中も同様


『なら話は早い、ソイツらに事情話してサクラになって貰ってくれ。事情を知る知らないでは、かなり違うからな』


アイツを引き摺り出すには大々的に、目立つ舞台が必要…とどのつまり、記者会見を開く訳なのだが。ここで参加する連中達が事情を知っていれば、こちらの有利になる。それにサクラになってしまえば、下手な中傷は出ない筈だ


「…成る程ね…OK!他の人達にも、声を掛けて貰ってサクラになってくれる様に頼んでみるわ!」
『助かるよ。貴女の所にだけ情報を流した甲斐があるってもんだ』
「やはり貴女か…」


HEROTVをあそこまで盛り返したその敏腕、そして判断力。彼女の所になら情報を流しても、悪い様には使わないだろうと踏んで正解だった。それ以前にルナ、お前俺の性格知ってるだろう


『当然だろ?あんな事件、早々に情報流せねぇっーの』
「本当、用意周到…」


それはどっちの意味かな、ブルーローズ。つか俺彼女に何かしたか?突き刺さる様な視線が痛いのなんの…あぁ虎徹絡みか


『誉め言葉として受け取っておく、ブルーローズ。それからウィザードが全面的支援する、気兼ねなくやってくれ』
「ウィザード…って確か…」
『知る人ぞ知る、裏世界の何でも屋』


最近は幅広く活動してるらしいから、名前位は聞いた事ある一般市民もいるらしい

ヒューはプロデューサーに向いてるかもな


「そんな奴らがっ!?」
『お前ら案内したヒューもウィザードなんだけど?』
「そうなんですか?」


皆一同に首を傾げる
あれ、アイツ言ってなかったのか?まぁ仕方ないっちゃ仕方ないか


『ああ。連中は社会のはみ出し者…元々は札付きの不良達さ。っても今は更正させて絶賛公正中』
「なんか、詳しくない?」
「それは当然ですよ。その方は、我々ウィザードの創始者なのですから」


不意に沸いた声音
聞き覚えのあるソレに、嘆息を漏らしながら振り向く


『よぉヒュー、お疲れ。報告頼む」


そこには少々疲れぎみのヒューがいた。いや本当スマン…


「はい、姐さん。事情はおやっさんに報告しました、姉さんに全権を任すからケリつけろ…だそうです」
『おやっさんらしいわ』


つか一般市民に全権任すってどうよ?オッサン、仕事しろ


「もしや…」
『流石ルナ、察しがいいねぇ…只今を持って事件の全権は俺に委ねられた』
「……因みにお嬢さん、おやっさんって誰?」


恐る恐る問いかけてくる虎徹に、ケロリと応えを返す


『警察警視総監』



(っー訳だ。一丁一芝居宜しくな)
(け、警視総監…)
(何者なんだ、この女…)

***
夢主視点
舞台裏その二。説明文みたくなってしまった…


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