「一体、どうなったんでしょう?」
あれから僕たちはヒューと言う青年の案内で、病院へと辿り着いた。僕達でも知らないルートを使用のは、人目を気遣ってくれたのだろう
手当てを受けている最中、僕達は奇妙な事に気付いた。TVから事件の情報が流れてないのだ、唯一流れているのはHEROTVのみだが…流すのはアナウンスのみで映像は全く無し。これには僕達も困惑を隠せなかった
一つの大部屋を宛がわれた僕達は、TVからの情報に頼るしかない。案内してくれたヒューという青年は、いつの間にか姿がなく
「情報規制を張ったのだろう…恐らく彼女の指示だ」
困惑する空気を打ち破ったのは、僕達と渋々来る羽目になったルナティックだった。彼の傷は深いものではなく、直ぐに姿が消えると思いきや…何故か病室に居座っていた
「彼女…ワンアイズの事ね?」
「その通り。突入する前に規制を張った…用意周到な彼女がしそうな事だ」
「でも何で?」
「混乱を防ぐため、と考えて良い」
銀河君の問いに、ルナティックは優しい声音で答える。どうしてか、彼は銀河君に対して柔らかい対応を取る
椿さんの息子、だからだろうか?
「下手に情報を流せば、市民はパニックを起こしかねない」
「それってさ、大げさ過ぎない?」
ブルーローズの言葉も確かだが、今回の事件は本当に爆弾騒ぎだけだったのだろうか?
僕にはもっと他に…裏がある様な気がしてならない
「そうなのよっ!」
「わっ!?」
「あら、アニエス」
突然沸いた声に振り向いてみると、そこにはHEROTVプロデューサーのアニエスさんが…かなりご立腹の様ですが、何故ここに?
「アニエス。何でお前がここにいるんだ?」
「知らないわよ。呼び出されたんだから」
「は?」
呼び出された?一体誰に?
そう問い質す前に、返答が返ってきた
『流石敏腕プロデューサーなだけあって、時間に正確だ』
「え?」
再び声が沸く方へ振り向く、今度は病室にいた者全員がだ
『やぁ皆、無事で何より』
「よ!てでぇま!」
独眼竜…ワンアイズ・ドラゴンとワイルドタイガーの姿
無事、だったんですね…
「良かったわ!二人共、無事だったのねっ!」
「おうよ!」
『事件は解決してないけど』
は、い?
事件は解決してない?ってどういう意味なんですかっ!?
『今回の一件、黒幕がいる』
独眼竜の言葉に、皆が息を呑む。まさか本当に裏があったなんて…
『でだ。黒幕の予想は粗方付いてんだが、引き摺り出すにも如何せん厄介で達が悪ぃ』
滔滔と語る彼女以外、誰も言葉を口にしない。淡々とした口調だがその声音には、はっきりとした怒りが孕まれていたからだ
横で沈黙している虎徹さんも表情を歪めてる…恐らく彼も全て把握しているのだろう
「で?私を呼び出したのは、犯人を引き摺り出す為?」
そんな彼女に声を掛けた強者がいた…アニエスさんだ。その言葉に独眼竜は視線だけを向け、小さく頷く
その瞳はとても鋭く、鋭利な刃物の様にとても冷たくて。思わず背筋が寒くなる
『ああ。貴女とここにいる者全員に一芝居、打って貰いたい。アイツを引き摺り出し、捕縛する為に…な』
(お、父さん…先生…)
(楓ちゃん、大丈夫)
(銀ちゃん…)
(お母さんやおじさん、事件を解決しようと頑張ってる。だから、ね?)
(……うん)
((それに、きっと二人共我慢してるよ))
***
兎視点
記者会見前の裏話。銀河は思いの外、観察力があります
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モドル