「こちらです皆さん!」
二人が犯人と戦っているであろう同時期、私達避難組は廃ビルの裏口である青年と出会った
「…貴方、は?」
「俺はヒュー。独眼竜の部下と思って頂ければ」
「部下?」
ああ、成る程
彼はウィザードの者か、それにしては利発そうな青年だ。ウィザードに名を連ねる者は皆、札付きの不良ばかりと聞いていたが
「詳しい説明は後程。とにかく皆さんは病院で手当てを受けて下さい、移動手段やその他諸々は全て手配済みですので」
「あらまぁ、用意周到ね」
恐らく彼女の指示だろう
彼女は先のそのまた先まで読む、どう教育されればそう育つのか不思議なくらいだ
「あ!ルナティックさんもですよ!貴方が来ないと俺が独眼竜に、こっぴどく説教されるんで!」
「………私もか」
「当然です。独眼竜の説教受けたいんですか、貴方?」
「………………」
それは正直、勘弁被る
彼女の説教は私の苦手な分類だ…最もな事を言われるので余計堪えるのだ、彼女の説教は
「そんなに辛いんですか?」
「一度受けてみればわかる」
「………お母さんのお説教、辛いからなぁ」
「…うん。先生のお説教、辛いね」
おや、ここに経験者が
子供達が青ざめているのを見たヒーロー達は、彼女の説教がどんなものか想像出来た様だ。顔色が一瞬で変わる…まぁ無理もない
「でも、大丈夫なの?どく…なんだっけ?」
「独眼竜…ワンアイズ・ドラゴンですよ。ブルーローズ」
「ドラゴン、強いの?見掛けヒョロヒョロだけど」
何も分かっていないな
彼女が弱い筈がなかろう、でなければ現場に現れまい
「少なくとも貴様より強い」
「なっ!?」
「……ルナティックのお兄さん、何か知ってるの?」
お、お兄さん?
この姿でそう呼ばれたのは初めてだな…ヒューという青年もそうだが、銀河君も利発そうだ
彼女が親バカになる訳だな
「強さとは見掛けで決まるものではない」
「うん、お母さん良く言ってた。"ホントの強さってのは、力じゃない。信念を貫ける心の強さだ"って。お兄さん、そう言ってるんでしょ?」
「その通り」
息子に何を吹き込んでいるんですか、貴女は…まぁらしいと言えばらしいですが
「独眼竜は実力もさることながら、その知識と戦術には私すら舌を巻く程だ」
「…それ、程なんですか?」
「特に戦術に関しては、軍師と呼ぶに相応しい程卓越している」
彼女の卓越した戦術、読み
こればかりは私さえ敵わない
「独眼竜は大丈夫です」
強い声音が響く
それは先程のヒューという青年から発せられた
「あの方は俺達を救ってくれた方、そう易々と倒れる人ではありません」
「…でも…」
「大丈夫。だって、ほら」
青年が指差した先を、私達の視線が辿る
その先にあったのは、廃ビルの壁が鋭利な刃物で斬られた形跡。そしてそこから見えるのは…ワイルドタイガーの肩に悠然と座る、ワンアイズ・ドラゴンの姿
二人には焦りの色など全く見えず、寧ろ余裕綽々で笑んでいた
(余裕…そうだな)
(そう、ですね…)
((琴瑟相和、が過ったのは何故だ?))
***
月視点
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モドル