ったくネイサンの奴、変な気ぃ回しやがって…だが助かったのは確かだ
俺と椿は銀河君を迎えに行って、その足で近くの公園に立ち寄った。つかいつの間にベンさんと知り合ったんだよ…
「……マジか?」
『こんな冗談言うか』
椿から告げられた事実に、俺は言葉が続かねぇ
まさか、椿が辞めさせられたなんて…しかもその理由が権力者の圧力ときた、何っう胸糞悪ぃ。しかも借家まで追い出されたっうんだから、椿も苦しんだだろう
『まぁ辞めさせられるのは、読めてたからな。その前に問題全部片付けて自分から退職届叩き付けてきたわ。借家はこっちから出てきた』
「………オイ」
訂正。案外図太い奴だった
「ん?て事はお前達、今どこで暮らしてんだ?」
『ホテル住まい』
「…おいおい。仕事も探さねぇと駄目だしな」
『仕事は決まったぞ。斉藤先輩の所』
「斉藤さん?」
そういやさっきから、斉藤さんの事"先輩"って呼んでるよな?
『銀河を引き取るまで、斉藤先輩の元で働いてたんだよ。元技術屋だって、前に言っただろ?』
「なーる。だから…」
一介の学校医があんなハイテク機器を開発出来るのか、些か疑問だったがそれなら納得がいく
それなら後は住まいだけか
『個人的には、シュテルンビルトに戻ってくる気はなかったんだがな』
「なんでよ?」
『……シュテルンビルトにはな、銀河の実母がまだ住んでるんだ』
「っ!」
銀河君を苦しめた本当の母
椿は実母から離れる為に、オリエンタルタウンに態々越したと言う
『実母の問題もあるが、一番の問題は銀河のネクストだ』
「ネクスト?」
『安定してねぇんだよ』
どうやら銀河君のネクストはパワー系という事のみしか分からず、後は未だ不明らしい
『恐らく銀河の心の傷が原因じゃないか、と踏んでる。もしかしたらこれから、完全に覚醒する可能性もあり得る』
「成る程」
逆を言えば暴走の危険もあるって事だよな?本当、一人で抱え込むヤツ…友恵お前はこれを危惧してたのか?
「じゃ尚更銀河君を一人に出来ねぇじゃねぇか」
『まぁ、な…』
不意に夢の中で友恵が言っていた言葉が、脳裏に浮かぶ。"守る"ってそういう事、ね…
「ったく。椿、お前銀河君と俺んち来い」
『…………は?』
珍しい、椿がアホ面してら
「は、じゃねぇよ。お前と銀河君くれぇなら、何とかなんだろ」
『い、いやいや!待て待て!虎徹お前正気か!?』
「正気だっつーの。つかお前働いてる間、誰に銀河君預ける気なんだ?」
『ぐっ…』
俺はお前の事もそうだが、銀河君も心配してんだよ。楓と同じ年だっーのに、自分自身を抑え込んでいる節がある。そんな子を一人にさせちゃ、いかんだろ?
「俺は出動が掛からなけりゃ何とかなる、ちったぁ周りを頼れ」
『………』
これは俺の勘だが、椿は周りに頼る環境が無かったんじゃねぇか?まぁ余り過去に踏みいる事はしたくねぇ…つかバニーで懲りたし
「椿?」
さっきから一言も喋らない椿に首を傾げた。顔を俯かせ、じっと動かねぇ…やべぇ、勘に障ったのか?
…と思いきや
そろりと椿の手が伸び、俺の服の裾を握った。俯いてた顔がゆっくりと上がり、その表情を見た俺は自分の目を疑っちまったよ
何せあの椿が、不安げに上目線で見上げてくるんだからさ。いやオジサン、ドキッとしちゃったよ
『虎徹、頼って…良いか?』
何、この可愛い生き物?オジサンを悶え殺す気ですか?
んな葛藤を何とか抑え込んで、俺は安心する様に笑んでみせた
「ああ、俺に任せろ」
雨降って地固まる
(…てな訳になりました)
(あぁ、やはりそうなったか)
(……斉藤先輩?)
(何となく察していたよ。あの男は不器用だが、信用出来る。安心したまえ)
((………この人こぇぇ))
***
虎視点
夢主は負けず嫌い。因みに斉藤さんとの絡みは、兄妹の感じで書いてます←え
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