#13

友恵の夢を見てから数日
あれから夢には友恵は出てこない、寧ろ胸騒ぎが強くなる一方だ

一体なんだってんだ…


***


「さぁ行くわよぉ!」
「「おー!」」


トレーニングの後、何故か俺達は全員でメシを食いに行く事になった

言い出しっぺはスカイハイ


「ノリノリだな、お前ら」
「実は今から行く所、密かに人気スポットなの」
「デザートもスッゴい絶品なんだって!」
「僕楽しみー!」


あぁ、なーる。そういう訳ね

雑談を交わしながら、ロビーへと入ると…何故かバーナビーの足が止まった


「どした?」
「…虎徹さん、アレ…」
「アレ?……っ!」


バーナビーの驚愕した表情にもオジサン吃驚したけど、何より驚いたのは指差した先にあった光景

……何で、いるんだ?


「………椿?」


視線の先にいるのは、スーツに身を包んだ椿。これまたOLみてぇにベッピンで似合うんだわ…って違ぇぇっ!
っと。向かいにいるのは…斉藤さん?

あの二人知り合いなのか?


『やっぱ高いですね』
「そりゃそうだろう?何を当たり前な事を言っているんだい」
『いや、分かってはいたんですけどね』
「こんな形で再会するとは…全く情けない」
『…相変わらずですね』


あの小声な斉藤さんと、まともに会話出来てるじゃねぇか…椿がここに居る事だけでも驚いてんのによ、今日は吃驚する事のオンパレードか


「わ、あの人キレー」
「虎徹さん、お知り合いなんですか?」
「あ、あぁ…」


周りの声なんて、今の俺には殆ど入っちゃいねぇ。神経を集中させ、遠くにいる二人の会話に耳を傾けた


「大体君は後先考えないから、こんな結果になるんだよ?分かってる?」
『じゃ放っておけと?尚更無理な話ですよ、俺の性格把握してるでしょう?」


あれ、一人称違くね?
しかも前より男らしくね?


「ま、君の性格を考えたら無理だろう。でももう少し考えた方が良かったね、君には銀河君がいるのだから」
『あー…ソコは反省してますよ、ハイ。でも後悔はしてない、見過ごす方がもっと後悔してた筈だし』

「……君らしい」


何か、あったのか?
先日から続いていた胸騒ぎが再び、息を吹き返す

不意に斉藤さんと会話を交わしていた椿が、視線だけ入り口へ向けた。それは今まで見た事ない位、鋭く。思わず息を呑んだ瞬間…


「っ!」


突然入り口から暴徒らしき人物が入り込み、斉藤さん目掛けて突進してきやがった!


『先輩っ!』


俺は我が目を疑った
あの椿が、斉藤さんを横抱きにして…ヒーローさながらの跳躍で、突進を避けたからだ


「済まない、助かった」
『……先輩、今度は何の恨み買ったんですか?』

「……さて?」
『駄目だこりゃ。昔とてんで変わっとらん』


昔って、前にもこんな事があったのか?つい口元が引き攣る

そうこうしている内に、椿は斉藤さんを下ろして相手と向かい合う


『はいはい。くっだらねぇ事してんじゃねぇよ』
「んだとっ!」


あの馬鹿!何逆撫でてんだ!?


『公共の迷惑だ……寝てろ』


椿の台詞が終わった瞬間、その姿はなく。気付くと椿は相手の背後に回っていた、何っう素早い

背後に回った椿は手慣れた様に、手刀で気絶させていく


「…虎徹さん」
「んだ、バニーちゃん」
「…椿さんは、一般人…ですよね?」
「俺もそう思ってたが、本人の口からは聞いてねぇ」


そう。椿からは自身が一般人とは、一言も聞いてない。逆に一般人じゃなければ、あの動きは頷ける


「いやいや、助かった。ありがとう」
『助かった、じゃないですから。不用意に恨みを売らないで下さいよ、対処する俺の身になって下さい』
「研究に犠牲はつきものさ」
『…ドヤ顔で言われてもな』


斉藤さんから手渡された縄で椿は、男達を捕縛していく。慣れた手付きだな、オイ

呆然と眺めていると、突然斉藤さんが俺達に振り向いた


「あぁ…皆、騒がせて済まないな」
「い、いや。斉藤さんが無事で何よりだよ」


気付いてたのかよ!…斉藤さんタチ悪ぃ

そして椿も、俺達へと振り向く。その表情は笑顔ではなく、どこか引き攣った笑顔で


『よ、よぉ…久しぶり虎徹』


椿との再会
まさかこんな形とは、予想外にも程がある


事実は小説よりも奇なり


(あら、空気がビミョーねぇ)
(誰?)


***
虎視点
実は斉藤さんとお知り合いだった夢主


prev next

モドル

×
人気急上昇中のBL小説
BL小説 BLove
- ナノ -