ワイルドタイガー
それが俺のもう一つの姿、ヒーローとしての俺。けれど今はネクストは一分しか持たねぇ、崖っぷちヒーロー
六年前に他界した亡き妻を一生愛し続ける、と誓っておきながら…別の女に誓いが揺れる、情けない男さ
【……つ】
友恵、こんな俺をお前はどう見る?叱るか、呆れるか?
【……て、つ】
もう、ヒーローは引退しねぇとダメなのかね?
【虎徹!いい加減にしなさいっ!】
「へ?」
聞き慣れた声音に意識を浮上させてみれば、辺り一面真っ白な世界………って、
「どこだよ、ここっっ!?」
【貴方の、夢の中よ】
その声、は…
【久しぶりね、虎徹】
「……と、友恵?」
あの頃と何ら変わらない友恵の姿が、俺の目の前にあった…ん?まて、今聞き捨てならない台詞を聞いたような…
「俺の、夢?」
【そうよ。ここは虎徹の夢の中。余りにも虎徹が不甲斐ないから、化けて出てきちゃった】
「化けて、って…お前なぁ」
笑顔で言う事じゃねぇだろ、ソレ。っーか化けて出れるんなら、楓ん所に出ろよ
【虎徹、貴方何をしているの?】
「何って…」
【自分の想い、気付いてるんでしょう?】
息を呑んだ
友恵からまさか、その話をされるとは思ってなかったから
【正直に言うとね、前は凄く虎徹にヒーロー辞めて貰いたかった】
「っ…」
そらそうだわな
家庭を犠牲にしてる様な不安定職業だ、友恵の考えは全うな正論…ん?
「前は?」
【そ、前は。バーナビー君と組んでからの虎徹、凄く生き生きしてて…それ見たら今まで考えてた事、ふき飛んじゃった】
「おいおい…」
まぁバニーちゃんと組んでると楽しいのは、確かだが…つか変わってねぇな、オイ
【虎徹。自分の想いに正直になって】
「友恵…」
【楓の為にも、ね?】
「けどよ、友恵!?」
俺は…俺は、お前を…
【じゃ、言い方を変えるわ】
「へ?」
【彼女を"守って"あげて】
友恵の言葉に、俺はどうしても頭が追い付かなかった。彼女、は恐らく椿を指してるんだろうが…その後の意味が分からん
「ま、もる?」
【そう…彼女は強いわ、私より数倍ね。けれど頼れる人が圧倒的に少なくて、彼女自身一人で抱え込む性格なの】
確かに、椿の性格を考えたらそれはあり得るな
【守る宝物があるけど、その宝物を狙う人もいる】
「何っ!?」
椿の宝物ったら銀河君だ
その銀河君を狙う不届き者がいるっつーのか!?
【だからお願い、虎徹。彼女の"心"を"守って"あげて】
「…友恵」
驚いた…今の友恵の表情は、確実に椿を心配するもの。どちらかっーと親友を心配する感じが近い…良い、のかよ?それで…
【彼女なら、虎徹と楓を安心して任せられる】
「友恵!」
次第に薄くなっていく友恵へ手を伸ばすが、その手は掠れ…どうしようもない事を痛感させられる
【虎徹……お願い、正直に、なって…】
***
「っ!…ゆ、め?」
目覚めると俺は汗だくだった
夢、だったのか…いや、夢にしてはリアル過ぎる
最近胸騒ぎがしてならない
友恵、お前はまさかコレを警告する為にも来たのか?
「いや、まさか…な」
だがその数日後
その胸騒ぎが現実化するとは…その時の俺は、知るよしもない
転ばぬ先の杖
(…お母さん…)
(んー…先輩に連絡、してみっか)
***
虎視点
賛否両論あるとは思いますが、ウチはこんな感じで行かせて頂きます(キリッ)
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モドル