#12

ワイルドタイガー
それが俺のもう一つの姿、ヒーローとしての俺。けれど今はネクストは一分しか持たねぇ、崖っぷちヒーロー

六年前に他界した亡き妻を一生愛し続ける、と誓っておきながら…別の女に誓いが揺れる、情けない男さ


【……つ】



友恵、こんな俺をお前はどう見る?叱るか、呆れるか?


【……て、つ】



もう、ヒーローは引退しねぇとダメなのかね?


【虎徹!いい加減にしなさいっ!】
「へ?」


聞き慣れた声音に意識を浮上させてみれば、辺り一面真っ白な世界………って、


「どこだよ、ここっっ!?」
【貴方の、夢の中よ】


その声、は…


【久しぶりね、虎徹】
「……と、友恵?」


あの頃と何ら変わらない友恵の姿が、俺の目の前にあった…ん?まて、今聞き捨てならない台詞を聞いたような…


「俺の、夢?」
【そうよ。ここは虎徹の夢の中。余りにも虎徹が不甲斐ないから、化けて出てきちゃった】
「化けて、って…お前なぁ」


笑顔で言う事じゃねぇだろ、ソレ。っーか化けて出れるんなら、楓ん所に出ろよ


【虎徹、貴方何をしているの?】
「何って…」
【自分の想い、気付いてるんでしょう?】


息を呑んだ
友恵からまさか、その話をされるとは思ってなかったから


【正直に言うとね、前は凄く虎徹にヒーロー辞めて貰いたかった】
「っ…」


そらそうだわな
家庭を犠牲にしてる様な不安定職業だ、友恵の考えは全うな正論…ん?


「前は?」
【そ、前は。バーナビー君と組んでからの虎徹、凄く生き生きしてて…それ見たら今まで考えてた事、ふき飛んじゃった】
「おいおい…」


まぁバニーちゃんと組んでると楽しいのは、確かだが…つか変わってねぇな、オイ


【虎徹。自分の想いに正直になって】
「友恵…」
【楓の為にも、ね?】
「けどよ、友恵!?」


俺は…俺は、お前を…


【じゃ、言い方を変えるわ】
「へ?」
【彼女を"守って"あげて】


友恵の言葉に、俺はどうしても頭が追い付かなかった。彼女、は恐らく椿を指してるんだろうが…その後の意味が分からん


「ま、もる?」
【そう…彼女は強いわ、私より数倍ね。けれど頼れる人が圧倒的に少なくて、彼女自身一人で抱え込む性格なの】


確かに、椿の性格を考えたらそれはあり得るな


【守る宝物があるけど、その宝物を狙う人もいる】
「何っ!?」


椿の宝物ったら銀河君だ
その銀河君を狙う不届き者がいるっつーのか!?


【だからお願い、虎徹。彼女の"心"を"守って"あげて】
「…友恵」


驚いた…今の友恵の表情は、確実に椿を心配するもの。どちらかっーと親友を心配する感じが近い…良い、のかよ?それで…


【彼女なら、虎徹と楓を安心して任せられる】
「友恵!」


次第に薄くなっていく友恵へ手を伸ばすが、その手は掠れ…どうしようもない事を痛感させられる


【虎徹……お願い、正直に、なって…】


***


「っ!…ゆ、め?」


目覚めると俺は汗だくだった
夢、だったのか…いや、夢にしてはリアル過ぎる

最近胸騒ぎがしてならない
友恵、お前はまさかコレを警告する為にも来たのか?


「いや、まさか…な」


だがその数日後
その胸騒ぎが現実化するとは…その時の俺は、知るよしもない


転ばぬ先の杖

(…お母さん…)
(んー…先輩に連絡、してみっか)


***
虎視点
賛否両論あるとは思いますが、ウチはこんな感じで行かせて頂きます(キリッ)


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