鏑木家からシュテルンビルトに戻った僕は、まず会社に事情をより詳しく説明した。勿論椿さんと銀河君の事は伏せて
社長は不満そうだが、楓ちゃんの事を切り出すと、掌を返した様に態度を一変。そして虎徹さんの休暇中のフォローも取り付ける事に成功
「これ位はして頂かないと」
いつも楓ちゃんには寂しい思いをさせているのだから、少しは良い思いをしても罸は当たらない。寧ろ当然だろう
会社を後にした僕は、ある人達に連絡を取った
「忙しい所、済みません」
「いや…俺達を呼び出すなんて珍しいな」
「そうねぇ。しかもこんな早くに」
ロックバイソンことアントニオさんと、ファイヤーエンブレムことネイサン。勿論虎徹さんの事を説明する為
「実は二人に協力して頂きたい事がありまして」
「「協力?」」
何故この二人かというと、僕達の中で常識をきちんと把握している"大人"だからだ。経験に勝るものはない、と良くいうですしね
「あの、虎徹がな…」
「でも何で私達だけ?他の子にも教えた方が、効率良いでしょう?」
確かに一理ある
だがそれには問題が浮上するのだ
「お忘れですか、お二方。ブルーローズの事を」
「「…あ」」
「彼女は虎徹さんに思いを抱いています。そんな彼女に今の現状を伝えたら…」
今虎徹さんは楓ちゃんだけでなく、椿さんと銀河君と一緒にいる。その光景は夫婦、親子と見えてもおかしくない
それを伝えてしまったら、現役女子高生の彼女は一体どうなる事か
「傷付くでしょうね」
「それだけじゃねぇぜ、ヒーロー業務にも支障をきたすかもしれねぇ。お前はそれを危惧してんだろ?」
「はい」
学生との二足の草鞋で大変な彼女だ、思い悩むのが目に見える
「お二方に伝えたのは他でもない、この事は他言無用でご協力して頂く為です」
「他の連中にも話さないのか?」
「どこに耳があるか分かりませんから」
人生経験豊富な二人なら、口は固いだろう。だが他の皆さんは分からない、下手に伝えてブルーローズの耳に入ってしまったら元も子もない
それに彼女が傷付いたら、虎徹さんや椿さんが絶対悲しむ
「そうね…ブルーローズの為を思うなら、そうした方が良いかもしれないわねぇ」
「…しゃあねぇな…会社の方は大丈夫なのか?」
「心配には及びません。そちらはしっかりと、手を打っておきましたから」
休暇は有給休暇に切り替えておいたし、社長にも斉藤さんにも口止めをした。これで情報が漏れる事はないだろう
「しっかりしてるぜ」
「じゃ私達は私達で協力させて貰うわね」
「お願いします」
壁に耳あり
("彼女"の事、ゆっくりで良いから教えてね、ハンサム君)
(俺も知りてぇな。あの虎徹を尻に引く女がいるとはな)
(構いませんよ)
(………どういうこと?)
***
裏話、兎視点
兎は奮闘して炎と牛の協力者をゲット
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