#09

お父さん、が出来た

でも本当は楓ちゃんのお父さんで、僕のお父さんじゃない


「どした銀河君?」
「ううん、何でもない」


虎徹おじさん
僕に"お父さん"を教えてくれた、優しくて大きな人

楓ちゃんはだらしないとか言ってるけど、そんな事ないと思う。凄く不器用…なんじゃないかな?
だって虎徹おじさん、お母さんソックリ。僕のお母さんも不器用だから、なんとなくさ


「椿ぃ、腹減ったぁ…」
『はぁ?さっき食ったばっかだろ!?』


確かに子供っぽいトコはあるけど、時々…凄く真剣な目をする。だから本当の虎徹おじさんは、違うんじゃないかなと思う。勿論これは僕の考えで、絶対じゃないけど


『…とりあえず、これ摘まんでおけや』
「サンキュー!」


お母さん、虎徹おじさんと一緒にいるトコが増えた。いつもより笑ってるし、楽しそう


「本当の、お父さんになってくれないかな?」


あ、でも楓ちゃんに悪いか


***


銀河が虎徹に懐いた
こればかりは仕方ない、だが昔よりは良い傾向なのは確か


「おう、椿。来たか」
『ああ』


休暇中の虎徹がいる間、私達は縁側で月見酒ならぬ、酒盛りをするのが当たり前になっていた

私自身酒には強い方だが、銀河の前で流石に酔う事は出来ない。それは虎徹も同様で…利害一致、ってヤツ


「しっかし、椿がまさかここまで酒に強いとはなぁ」
『意外?これでも潰れた事ねぇんだぜ?』
「…マジか…」


虎徹と話すのは楽だ
気を張らなくて良いし、何より馬が合うのだろう。会話がポンポン弾み、酒も進む


「そういやよ」
『ん?』


カラン、とコップの氷が音を奏でる
コロコロ変わる虎徹の表情がいつの間にか、真剣味を帯びていた


「…今日、銀河君の様子がなぁんか変だったんだが…なんか知らねぇか?」
『銀河、が?』


虎徹の観察眼は侮れない
そりゃ鈍い時はあるが、その本質はかなりのものだ。ヒーロー歴10年は伊達じゃない

ま、鈍い所は最早治らないと思うが


『私と楓ちゃん、お前と銀河…さてこの公式で出て来る答えは?』
「……………あぁー…」
『仕方ないさ。銀河はココに越してくるまでは、他人を拒絶してたからな』


引き取った直後の銀河は、他人への拒絶反応がそりゃもう酷かった。理由は極簡単、実母から受けた虐待からくる心因性の病。たが越してきて、鏑木家と交流を深めてから…銀河はその病から抜け出す事が出来た


「………そうか」
『最後の一押しは虎徹、お前だ。感謝してるぜ』
「ば、ばっか!感謝されるよーな事、してねぇよ!」


口ごもりながら虎徹は、照れ隠しかそっぽを向く。彼の耳は赤く染まってて、背を向けられていてもソレは一目瞭然

…ホント、分かり易い奴


『ありがと、虎徹』
「……椿?」


虎徹の背中に、額を当てる
眼前にある背中は、とても広く大きくて。銀河が憧れる理由が、何となくだが分かった気がした


『たとえお前のネクストが一分しかもたなくても、私と銀河にとっちゃヒーローだよ』
「……サンキューな、椿」


救われたのは、どちら?


この親にしてこの子あり

(…母ちゃん。何であの二人、良い雰囲気なのにくっ付かねぇんだ?)
(村正、私も同じ事考えてたよ…)

***
銀河→夢主視点
タイトルは夢主親子と鏑木親子に引っ掻けてます
銀河は精神年齢高め


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