「ちょ、待て。バーナビー。今なんつった?」
「ですから。虎徹さんの休暇が延びました」
翌朝
バーナビーの爆弾発言に、鏑木家に揃う一同が沈黙せざるを得ない。それもそうだ、虎徹の休暇が延長されたというのだから
しかし問題はソコじゃない
「ちっががぁうっ!俺が聞いてんのはな!何で俺の休暇が延びたのに、お前は今日帰っちまうって事だよ!」
「あぁ、その事ですか」
「あぁ、ってお前さんね…」
ごく当然と言わんばかりの反応に、虎徹の勢いが削がれる
だが些か違和感があるな…
『バーナビー君、いくら何でも突然過ぎない?』
「昨夜会社から連絡がありまして、急遽仕事が入ってしまったんです。こればかりは仕方ありませんよ」
「ぐっ…」
あぁ、畳み掛けられてる
まぁ仕方ないだろう。虎徹とバーナビーはネクストの能力こそ同じだが、中身は正反対…真逆のコンビ。だからこそ息が合うのだが、それ故に虎徹は彼に言いくるめられてしまうのが難点
それにしたってバーナビーだけって、おかしくないか?まさかとは思うが…
『バーナビー君、君もしかして…』
「そういう事になりましたので、虎徹さんは僕に気にせず休暇を満喫して下さい」
台詞遮りやがった…
これで確定だ、この子はワザと仕向けたのか。とすると、他のヒーロー達もグルだな
『虎徹さん。折角ですからバーナビー君のお言葉に甘えましょう?』
「……チッ!仕方ねぇな」
そうして
バーナビーは早朝から、鏑木家を発つ事になった
渋々だが受け入れた虎徹も恐らく、彼の本意に気付いているだろう。ホント、仲が良いんだか悪いんだか
***
唐突な俺の休暇延長に、戸惑いが無かった訳じゃなかったんだが…これに一番喜んだのがやはり楓だ。表向きはバーナビーが早々戻っちまった事で不機嫌だが
ほんの少しだが、口元がニヤけてるからな
んで。時間の余裕が出来た俺はというと…
「はぁ、あったけぇ」
縁側で日向ぼっこしてた
椿が俺を気遣ってか、ゆっくり休めと言い出したのだ。楓を説得したのも椿で、骨が折れてたみてぇ
その楓も、何だかんだ言いつつ俺の側から離れない。ったく可愛いヤツだなっ!
『あらら、寝ちゃった?』
「二人共な」
穏やかな空気の中、椿が静かに俺へ歩み寄る。その腕にはブランケットが、予測済みってか…出来た女は違うねぇ
『銀河まで寝ちゃて…』
「まぁ良いんでね?」
楓と一緒に俺の側を離れなかった銀河君も、この陽気に負けてか、今や二人共夢の中
「こうしてると何だか二人が双子みてぇだな」
『どっちが上?』
「んー?そうだな…二人共確りしてるが、やっぱりここは銀河君だろ」
『…楓ちゃんに絶対話すんじゃないよ、それ』
苦笑を漏らしながら、椿はゆっくりと二人にブランケットを掛ける。その表情は母親の顔で
ついつい悪戯心が涌き出る
「お母さんや。子供達が寝ちまったし、俺達は俺達で楽しみますか?」
口元がニヤけるが、構やしねぇ。どんな反応が返ってくるかと思いきや、椿は目を軽く瞬かせて、大きく溜め息を吐き出しただけだった
『阿呆言ってんじゃないの』
「てっ!?」
ちょ、痛ぇ!
拳骨だけまだマシだろとか呟く椿に、僅かだが背筋が震える。コイツ、母ちゃんみてぇ…あ、母親か
『昼寝も良いが、余り寝させないでよ?』
「わーってる」
他愛ない会話を交わしてはいるが、耳が赤くなってる事には、俺は敢えて気付かない振りをした
言葉は心の使い
(冗談とはいえ、心臓に悪いっーの!)
(何っーか、椿って可愛いトコあるな)
***
夢主→虎徹視点
当サイトの虎は天然タラシ
prev next
モドル