#08

「ちょ、待て。バーナビー。今なんつった?」
「ですから。虎徹さんの休暇が延びました」


翌朝
バーナビーの爆弾発言に、鏑木家に揃う一同が沈黙せざるを得ない。それもそうだ、虎徹の休暇が延長されたというのだから

しかし問題はソコじゃない


「ちっががぁうっ!俺が聞いてんのはな!何で俺の休暇が延びたのに、お前は今日帰っちまうって事だよ!」
「あぁ、その事ですか」
「あぁ、ってお前さんね…」


ごく当然と言わんばかりの反応に、虎徹の勢いが削がれる

だが些か違和感があるな…


『バーナビー君、いくら何でも突然過ぎない?』
「昨夜会社から連絡がありまして、急遽仕事が入ってしまったんです。こればかりは仕方ありませんよ」
「ぐっ…」


あぁ、畳み掛けられてる
まぁ仕方ないだろう。虎徹とバーナビーはネクストの能力こそ同じだが、中身は正反対…真逆のコンビ。だからこそ息が合うのだが、それ故に虎徹は彼に言いくるめられてしまうのが難点

それにしたってバーナビーだけって、おかしくないか?まさかとは思うが…


『バーナビー君、君もしかして…』
「そういう事になりましたので、虎徹さんは僕に気にせず休暇を満喫して下さい」


台詞遮りやがった…
これで確定だ、この子はワザと仕向けたのか。とすると、他のヒーロー達もグルだな


『虎徹さん。折角ですからバーナビー君のお言葉に甘えましょう?』
「……チッ!仕方ねぇな」


そうして
バーナビーは早朝から、鏑木家を発つ事になった

渋々だが受け入れた虎徹も恐らく、彼の本意に気付いているだろう。ホント、仲が良いんだか悪いんだか


***


唐突な俺の休暇延長に、戸惑いが無かった訳じゃなかったんだが…これに一番喜んだのがやはり楓だ。表向きはバーナビーが早々戻っちまった事で不機嫌だが

ほんの少しだが、口元がニヤけてるからな

んで。時間の余裕が出来た俺はというと…


「はぁ、あったけぇ」


縁側で日向ぼっこしてた
椿が俺を気遣ってか、ゆっくり休めと言い出したのだ。楓を説得したのも椿で、骨が折れてたみてぇ

その楓も、何だかんだ言いつつ俺の側から離れない。ったく可愛いヤツだなっ!


『あらら、寝ちゃった?』
「二人共な」


穏やかな空気の中、椿が静かに俺へ歩み寄る。その腕にはブランケットが、予測済みってか…出来た女は違うねぇ


『銀河まで寝ちゃて…』
「まぁ良いんでね?」


楓と一緒に俺の側を離れなかった銀河君も、この陽気に負けてか、今や二人共夢の中


「こうしてると何だか二人が双子みてぇだな」
『どっちが上?』
「んー?そうだな…二人共確りしてるが、やっぱりここは銀河君だろ」
『…楓ちゃんに絶対話すんじゃないよ、それ』


苦笑を漏らしながら、椿はゆっくりと二人にブランケットを掛ける。その表情は母親の顔で

ついつい悪戯心が涌き出る


「お母さんや。子供達が寝ちまったし、俺達は俺達で楽しみますか?」


口元がニヤけるが、構やしねぇ。どんな反応が返ってくるかと思いきや、椿は目を軽く瞬かせて、大きく溜め息を吐き出しただけだった


『阿呆言ってんじゃないの』
「てっ!?」


ちょ、痛ぇ!
拳骨だけまだマシだろとか呟く椿に、僅かだが背筋が震える。コイツ、母ちゃんみてぇ…あ、母親か


『昼寝も良いが、余り寝させないでよ?』
「わーってる」


他愛ない会話を交わしてはいるが、耳が赤くなってる事には、俺は敢えて気付かない振りをした


言葉は心の使い

(冗談とはいえ、心臓に悪いっーの!)

(何っーか、椿って可愛いトコあるな)

***
夢主→虎徹視点
当サイトの虎は天然タラシ


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