06

僕の家には父親が居ない
幼い頃の僕はそれが当たり前と思い込んでいて、父親がいるのが普通だと知った時、母を問い詰めた

「おかーさん!なんでぼくのうちには、おとーさんがいないの?みんな、へんっていうの!どうしてっ!?」
『………ごめんね』


あの時の…悲しげな表情の母を見た時、僕はなにも言えなかった。今までそんな表情一つ見せなかった母が、唯一見せた時だったからだ

それ以降僕は、父親の話題を口にする事はしなかった。母の悲しげな表情を、それ以上見たくないから

正直言うと、皆が羨ましい
お父さんという存在がどんなものか、僕は知らないから。まぁこんな事をハリーの前では、口が避けても言わないが


「…お父さん、か…」


逃げ出す様に寮を出たは良いが、図書館の用事はすぐに済んで手持ちぶさた。すぐ寮に帰りたくはない…どうしようかな


「Mr.クレハ?」
「え?」


聞き覚えのある声に振り向くと、そこには仏頂面なスネイプ教授の姿が……まだ就寝時間じゃなかった、よな?


「何故この様な場所におるのだ?」
「えーっと…」


親の話題で気まずくなって、寮に帰りづらいとは流石に言えない…

冷や汗だらだらで固まっていると、頭上で大きな溜め息が聞こえた


「来なさい」
「…………」


漆黒のローブを翻し、教授はサクサクと歩いていく。少し呆けた僕は、慌てて教授の後を追い掛けた。説教とか減点とかじゃ、ない…よな?


「………………へ?」
「どうした?早く入れ」
「は、はいぃ!」


ち、ちょい待てぇ!
何がどうなって、僕は教授の部屋に呼ばれて、しかも紅茶まで頂いてんだぁ!?

…あ、この紅茶うま


「少しは落ち着いたかね?」
「へ?あ…そういえば…」


穏やかなバリトンの声を聞いて、今更ながら自分が落ち着いてるのに気付く


「先程のお前はまるで、絶望真っ只中と言わんばかりの表情だったからな」
「そ、そんなにヒドイ表情だったんですか…僕?」
「…自覚しておらんとは…」


呆れたような溜め息が教授から聞こえる、耳が痛いなぁ

でも教授、なんで僕に構うのかな?僕は教授が毛嫌いするグリフィンドールなのに…


「しかし…こうして見ると似ておるな」
「似て、る?」
「我輩がまだ学生だった頃、お前に良く似た学生がいたのだ。お前と考え方が良く似ておってな」
「へぇ〜」


教授の学生時代か、想像つかない…


「考え方は似ておっても、行動までは似ておらん所が救いか。奴はアグレッシブ過ぎる所が難点だった」
「………………」


スンマセン、教授
俺も根っこはそんな感じだったりするんだ。つかその人、他人とは思えないなぁ

しかし教授って意外と、結構喋る人だったんだ。僕てっきり寡黙な人かと思ってたや


「どうした?」
「いえ…あの、教授。またこうして、お茶をして頂いて良い…ですか?」


母ともこうして、お茶を飲んでいた。つい懐かしさに顔を俯ける


「……時間に余裕があれば、な」
「あ、ありがとうございます!」


重なる過去と今

(その大きな背中に、憧れを抱いた事は…ハリー達には絶対黙ってよ)

(…"奴"と姿が被るのは何故だ?)


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