『起きろぉっ!!』
あるアパートの一室に、女性の甲高い声が響く
そこではソレが、日常茶飯事だったりする
「お姉っ!!何で起こしてくれなかったのぉ!?」
部屋内で慌てて身支度する、小柄な女の子。纏っている制服は、近隣の高校の物
寝坊したのか、後ろ髪がぴょこんと跳ねていた
『何言ってんだい!私ゃ何度も起こしに行ったわっ!!』
台所から不機嫌な表情を浮かべながら、視線を向けた女性は、彼女より少し年上で、何処か似ていた。姉妹なのだろう、二人が並ぶとそれが良く分かる
『弁当忘れんなよ!とっとと行って勉学に励んで来な、麻衣!!』
麻衣と呼んだ女子高生に、女性は弁当箱を手渡す
それを慌てて受け取った麻衣は、ローファーを履きながら玄関を飛び出して行った
「お姉、何時もありがと!行ってきまーす!!」
『全く…毎朝毎朝…』
麻衣の後ろ姿を、苦笑で眺めた彼女はつい溜息を漏らす
そして彼女もまた、己が身支度の為に再び部屋へと踵を返した
―――季節は春
谷山 麻衣 16歳 女子高生
そして彼女の姉
谷山 葵 19歳 大学生
まさか、これから二人の人生を変える出会いがあろうとは
この時はまだ二人は、思いもしなかった
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