(01/02)

『起きろぉっ!!』

あるアパートの一室に、女性の甲高い声が響く
そこではソレが、日常茶飯事だったりする


「お姉っ!!何で起こしてくれなかったのぉ!?」


部屋内で慌てて身支度する、小柄な女の子。纏っている制服は、近隣の高校の物
寝坊したのか、後ろ髪がぴょこんと跳ねていた


『何言ってんだい!私ゃ何度も起こしに行ったわっ!!』


台所から不機嫌な表情を浮かべながら、視線を向けた女性は、彼女より少し年上で、何処か似ていた。姉妹なのだろう、二人が並ぶとそれが良く分かる


『弁当忘れんなよ!とっとと行って勉学に励んで来な、麻衣!!』


麻衣と呼んだ女子高生に、女性は弁当箱を手渡す
それを慌てて受け取った麻衣は、ローファーを履きながら玄関を飛び出して行った


「お姉、何時もありがと!行ってきまーす!!」
『全く…毎朝毎朝…』


麻衣の後ろ姿を、苦笑で眺めた彼女はつい溜息を漏らす
そして彼女もまた、己が身支度の為に再び部屋へと踵を返した


―――季節は春

谷山 麻衣 16歳 女子高生

そして彼女の姉
谷山 葵 19歳 大学生


まさか、これから二人の人生を変える出会いがあろうとは
この時はまだ二人は、思いもしなかった


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