「山崎君の腕前、前より上がったよね?」



事の始まりは、総司の何気無い一言から始まった


***


『………Ha?』

「山崎君が前より強くなった理由、知りたいんだ。鈴々音なら知ってるよね?」

『Ah-.』



突然部屋にやってきた総司が開口一番に言った言葉に、俺は目を瞬く

…他の連中は知らんのか

ここ最近、山崎は佐助に修行を施して貰ってる
流石戦国乱世の現役忍頭、と言うべきか。はたまた、流石幸村のオカンと言うべきか…教え方は堂に入っており。山崎の吸収の良さと真面目な性格が相乗してか、実力は瞬く間にうなぎ登り

そしてやはり其れは、皆が疑問に思うのは当然で



『さぁな。んなの、本人に聞いてみろや』

「えー…」



っても。問い質した所で、山崎が素直に言う訳がない…特に総司なら尚更、な


***


屯所の裏庭の、人目がつかない一角



「(また腕上げたな)」

「くっ!!」



光も殆ど届かないそこで、俺様は苦無を握る。人が寄り付かないこの場所は、俺様達の格好の修行場だ



「来ないの?だったら俺様から行く、よっ!!」

「っ!!」



素早く苦無を無数構え、相手に投げ付ける。勿論本気じゃないけど、それに近い

何とか避けきった相手の首筋に、苦無を宛がう



「御仕舞い」

「…参りました」

「腕、上げたねぇ…烝」



新撰組監察の烝に、俺様が修行をつけ始めたのはつい最近

適当に済ませればいいか、と最初は考えてたけど。烝の類い稀なる成長速度に、ついのめり込みんだ

正直に言おう
この子は一流の忍になれる才能を持ってる

強いて言う難点は、優し過ぎるって所かなぁ…



「んー、そろそろ休憩入れようか?」

「ですが…」

「身体をしっかり休める事も大事だよ、って前にも言っただろ?」

「っ…はい…」



真面目過ぎるんだよね、烝ってさ。も少し肩の力を抜いても良いと、俺様は思うけど

こればっかりは仕方ないか



「流石に師匠には敵いませんね」

「ちょ、烝!俺様を師匠って呼ぶの止めてってばっ!!」

「嫌です」



この頑固者め…

修行して暫くしてから、烝は俺様を師匠と呼び始めたんだけど…柄じゃないから止めろと言っても、聞きやしない



「師匠は俺の憧れであり、目標なんですから当然です」

「あ、そ…」



この子はぁ!!
何っう言葉を…俺様、今顔真っ赤だろうなぁ…
でも…悪い気がしないのは、この子が言うからだろうか?

強くさせてあげたい
もっと強く、生き延びる為に強くさせてやりたい

そう思ってしまう俺も、とことん甘いな…



「じゃ、鍛練の続きをしようか?」

「はいっ!!」


師弟以上、兄弟未満


『……兄弟かよ…これなら確かに、他の連中には言えねぇよなぁ…』


***
名無し様リク
『繁桜で、佐助が山崎に修業をつける話』でした

大変遅くなりました…リクエストに添えているか些か不安です(--;)

当繁桜の二人は兄弟地味てる様な師弟関係、というのが管理人のイメージでして。今回はそちらを表現させて頂きました
お気に召されれば幸いです

企画参加ありがとうございました!

12.07.11.



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