"あの夏"から、数年

月日は流れる様に経過し、気が付けば良い歳だ



『早い、なぁ…』



そして"あの夏"以降、私達姉弟は、度々この家に訪れてる

繋がれた縁と言うものは中々切れない、と何かの本で読んだが…あながち間違ってはなさそうだ



「上田も久しぶりだな」

『ま、仕方無いと言えば仕方無い』



度々親戚一同が集まる事がある家だが、例外がある

私の隣にいる、理一だ

彼は自衛隊、陸軍所属
ましてや"あの夏"以降地位が上がったので、中々休みが取れなかったのだ。それは空軍所属の私にも当てはまるが


***


「久しぶりだな、理一、凪」

『出迎えがテメェかよ』

「シシシ、固い事言うなよ」

「…随分柔らかくなったな」



到着した家の玄関先で出迎えたのは、ネコ毛の男。"夏の一件"の当事者である侘助だ

あの後その腕前を買われたコイツは、オズと自衛隊両方からスカウトされていた。確かオズの方を選んだとか言ってなかったか?



『そういやお前、オズに就職したんだよな?』

「侘助、自衛隊のスカウト蹴ったのか?」

「ああ…オズの方が俺に向いてると思ってな」



屋敷の廊下を歩きながら、他愛ない世間話を交わす。昔の侘助だったら、こんな風景は無かっただろう



『ま、こき使われろ』

「…とっくに使われてるっーの…何とかしてくれよ凪、人使い荒過ぎるぜ?」

『…何やってんだ、アイツ』



確かに昔から破天荒な所はあったが…まぁ後で連絡してみるか

栄おばあちゃんへの挨拶も済み、親戚一同揃った宴会状態には慣れたものだ



「全く…理一も凪さんも中々顔を出さないんだから」

『スミマセン』

「仕方ないだろ、母さん。俺達階級上がって、仕事量増えたんだから」



万里子さんはこう言ってはいるが、私を娘当然に扱ってくれてる。心配してくれているからこその言葉だと、私も理一も分かってはいるのだ



「一番ビックリしたのは侘助がオズに就職した事だよな?」

「ヒヒッ…誰か知らないが、推薦したヤツがいたらしくてな」

「…………姉さん?」

『あ、バレた?』



何を隠そう、侘助を推薦したのは私だ。いや勿体ないだろ



『コイツが自衛隊っー枠組みに収まる様なヤツか?ならいっそ、自由に動ける様な場所が良いなと思って。オズも年中人手不足だったし』

「お前、相変わらずだな…その内理一の子供が出来ましたー、なんて言いそうだ」

「おいおい侘助、悪い冗談は止めろ…有り得そうで怖い」

『出来たけど?』



…………………………



「ええぇぇー!?」

『相変わらず良い反応だ』



実はその報告も兼ねての訪問だったりする

っても。私自身つい最近知った事だが



「凪…俺、初耳なんだが?」

『うん。理一にまだ言ってなかったね』

「…姉さん…」



仕方なかろ。お互い仕事が忙しかったんだから

つか自覚してからは、身体に負担掛かる事はしてないよ



『来年には家族が増えるんで宜しく』


青天の霹靂

(因みに仕事はギリギリまで続けるから)
(ちょ、大丈夫なの!?)
(そこは上司を説得済み。引き継ぎも含むからさ)
(……理一、後で話しましょうか?)
(…はい)


***
杏樹様リク『完結後。夢主が妊娠してる事を、親戚一同がいる前で理一に告げる話』でした

設定はifな感じで、こんな風な仕上がりました。少し侘助がデバった様な…(--;)

大変遅くなりまして、申し訳ありませんでした
企画参加、ありがとうございます!

12.10.15.



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