「……春だな」

『……春だねぇ』



トシの自室で、まったりと茶を啜る
最近京も珍しく静かで、平和そのもの。屯所内でも問題児達の鳴りは、静かなもので。季節柄が関係しているのかは定かではない

ともあれ。二人でこう、ゆっくり出来るのは嬉しい限り



「何時振りだ?こんな感じに浸ってられるのは?」

『さぁ…考えたくないね』

「……確かに」



お互い新撰組幹部、しかもTOPに近い位置にいる為か激務続き。そりゃ久々過ぎるってもんだ…あれ、涙が…



『これで問題とか起きなければ御の字なんだけど…』

「止めろ。言ってる側から起きる」

『…………だな』



二人揃って溜め息を漏らしたその時。けたたましい音が、遠くから響いた

それを聞き、ついトシと顔を見合わせる



「…言った側からこれか…」

『今の、道場の方から聞こえたな…』



こればかりは仕方ない
庄子へ手を掛けようとしたのだが、それは空振りに終わる

俺が開ける前に、部屋に入ってきた者がいたからだ



「あ、いたいた」

『佐助?』

「ごっめんね、二人共。ちょーっと原田の旦那達と道場で遊んでたら、加減忘れちゃってさー」



突然部屋へ現れた佐助は、俺達の言葉を遮るかの様にマシンガントークをかます。しかも作り笑顔を張り付けて

…怪しさ全開だぞ?



『佐助。何か俺達に隠してねぇか?』

「いやだなー隊長や土方の旦那に隠し事したって、俺様に何の徳があるのさ?」

「…確かに」

「じゃ報告はしたから。後は俺様に任せて、二人はゆっくりしてねー」



まるで突発的嵐が過ぎた様な感覚だ。言う事言って、佐助は姿を消した…ありゃ何か隠してんな



『…どうする?』

「どうするもこうするも、仕方ねぇだろ。つか鈴々音、こっち来て座れ」

『は?あ、あぁ』



妙に引き際の良いトシに首を傾げつつ、言われた通りに側へと歩み寄って座る…と。膝に感じた重みに目を見開く



『ってトシィぃぃぃっ!?』

「五月蝿い、黙れ」



奇声も上げたくなるわ!お前何やってんだよ!?



『いやいや、お前なにっ』



そりゃあ慌てるさ
トシが所詮、膝枕をしてきたのだから…こういう事に免疫がない俺は特に焦る



「良いじゃねぇか、たまにはよ」

『……っ』

「ちったぁ構え」



あれ、トシの耳が赤い
俺の方に目を向けてねぇし…もしかして、照れてる?

…まぁ良いか
ここ最近、お互いに多忙を極めていた事だし。何せ口を開けば、業務連絡しか交わしてなかったからなぁ…



『はいはい、ゆっくり休め』

「餓鬼扱いすんな」



あ、剥れた
全くコイツは手の掛かる…でもそこが愛しいと思ってしまう俺は、既にトシに骨抜きにされているんだろうな

ゆっくりと、艶やかなトシの漆黒の髪を撫でる



『寝ろ。暫くしたら起こしてやるから』

「……頼む」



トシの瞳が揺らぐ
ついつい笑みが零れ、額に口付けを落とす

愛しい男(ひと)よ、一時の休息を



『お休み、歳三』



一時の休息

(佐助さん、大丈夫でしたか?)
(うん!何とか誤魔化せたよー)
(おやおや?千鶴ちゃんに佐助君、斎藤君…山崎君まで)
(副長と隊長を今日一日労う会です)
(は?)
(あの二人はいつも激務だからね、今日位はのんびりさせたいなってね。医療隊は風魔が見てるよ)
(成る程…なら微力ながら手伝うか)
(ご協力、感謝する)



***
ゆい様リク『繁桜夢主と土方のほのぼのな話』でした

膝枕ネタ、実は繁桜で初の御披露目だったりします←
余談ですが三馬鹿トリオが騒ぎを起こし、その後巡回へと追い出されました(笑)

大変遅くなって申し訳ありませんでした
企画参加、ありがとうございます!

12.10.10.



×
人気急上昇中のBL小説
BL小説 BLove
- ナノ -