『なぁ、トシよ』

「なんだ?」

『……"アレ"さ、どーにかならん?』



共に書類整理をしていた鈴々音がふと、障子を開けた先を指差す

その先にあるのは、斎藤と雪村が仲睦まじく会話をしている光景



「………………」

『アレ、まだ恋仲になってねぇよな?』

「斎藤にんな度胸あるか」



互いに思いあっているのは端から見りゃ分かるんだが、あの頑固者の斎藤だ

恐らく雪村にまだ、自身の思いを伝えてねぇだろう



『千鶴も度胸はあるにはあるんだが、こういう時に限って臆病になるしなぁ』



刹那
鈴々音の瞳が怪しく光り、不敵な笑みを浮かべる

こんな表情する時は、大概何かを企んでる…ぜってぇ



『トーシィ?』

「…その猫なで声は止めろ。お前が考えそうな事くれぇ大体予想がつく」

『なんだ、つまんね』



……………おい



***



「え、と…」



頓所前の入り口で、千鶴ちゃんが不安げに待ちぼうけ中

俺様、特務隊の猿飛佐助
今回千鶴ちゃん達の覗…じゃなかった影ながら護衛してくれ、と隊長から仰せつかりました!

さてはて
千鶴ちゃんは隊長から買い出しを頼まれたんだけど、確か護衛が付くんだよねぇ



「済まん、待たせた」

「……斎藤、さん?」



あれま。まさかの斎藤の旦那が護衛ですか!?隊長も土方の旦那もやるねぇ…

二人の仲は新撰組内部でも、実はかなりの噂。因みに本人達には問い質さないのが、暗黙の了解になりつつある



「副長直々に頼まれてな」

「そう、なんですか」



あぁ!なんでそこで、それを言っちゃうの!

ほら、千鶴ちゃんが落ち込んでるじゃんか!



「だが…俺も暫く外の空気に触れていなかったからな、切っ掛けをくれてありがとう」

「い、いえ…」



えーと…斎藤の旦那って、天然のタラシ?だとしたら質悪っ!?

あ、いけね。二人が行っちまう!追いかけないとっ!


**


「これで全部か?」

「はい」



隊長に頼まれた買い出しは順調に済み、斎藤の旦那が自然と荷物を持つ形になってる

…見るからに夫婦そのものって思うのは、俺様の気のせいだろうか?



「斎藤さん。今日はありがとうございます」

「いや。俺も良い気晴らしになった」

「姉さんが帰りに甘味を食べる様にって、余分にお金を持たせてくれたんですけど…斎藤さんは甘いもの大丈夫ですか?」



おー!あの千鶴ちゃんが、頑張ってるよ!

斎藤の旦那、ここで答えなきゃ男が廃るよ?



「生憎甘いものは苦手でな」

「そう、なんですか」



……えー?
そこは苦手でもさ、伏せて千鶴ちゃんを立てる所でしょ!?

斎藤の旦那って女心を分かってないよっ!



「だが、茶なら付き合える」

「…………ありがとうございます!」



これは隊長の言葉で言う、"結果おーらい"ってやつ?まぁ、千鶴ちゃんが嬉しそうだから良いか

けど隊長や土方の旦那に何て報告しよう…


あ。千鶴ちゃんには頑張ったご褒美に、後で美味しい甘味を作ってあげよ!



二歩前進、一歩後退

『……佐助の報告見た?』
「……見た」
『「あり得ねぇっ!!」』


***
雪桜清歌様リク『千鶴と斎藤の関係に、夢主と土方が打開しようと奮闘するが、自覚止まりなオチの話』でした

進行は佐助にして頂きました(笑)
二人で買い出しによる切っ掛け…な筈が空回りで、悔しい思いをして頂いた出歯亀組(^-^;

こんな感じで宜しかったでしょうか?大変遅くなって申し訳ありませんでした

企画参加、ありがとうございます!

12.08.03.



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