それはある日の事…



「薫。今、大丈夫か?」

「平助?平気だけど…」


医療隊待機室
ここは何かあった時の為にと医療隊員が待機出来る様、鈴々音姉さんが作った八畳程の小部屋

殆どの医療隊員の人達は、仕事がない時此処で過ごしている。勿論僕もその一人

そんな時、ひょっこりと平助が顔を出した



「修練してぇんだけど、新八っあんや左之さんいなくてよ…」

「ああ…」



年齢が近いからか、僕と彼は時たま道場で剣を交えていた
医療隊に所属になったとはいえ、自身の身は自身で守らないと思っていたし

何より彼相手なら、気兼ねない。彼の明るい性格も起因してるだろう



「薫、行っても良いぞ」

「コッチで何かあっても、俺達で対処しておくさ」



医療隊の皆は優しい
こんな僕を受け入れてくれ、尚且つ理解してくれてる

正直、凄く感謝している…絶対に口にしないけど



「…はい!」

「んじゃ行くか!」


***


僕と平助が道場で手合わせする時は、何故か必ずと言って良い程千鶴が相席する。勿論今回も何処から聞き付けたのか、息を弾ませてやって来た



「なぁ千鶴。俺達の鍛錬見てて楽しいか?」



休憩を入れた時、平助が疑問を千鶴に投げ掛ける。彼も千鶴の行動を、不思議がっていたから

すると千鶴は笑みを深め、僕達が驚く言葉を発した



「楽しいよ。だって二人共凄く良い表情してるし、何より仲良くしてくれてるのが嬉しい」

「「……………」」



事も無げに語る千鶴に、僕達は言葉を無くす

そして気付いた
彼女は恐らく僕を気遣って相席している
今でこそ、新撰組に名を連ねる僕は元を正せば、彼等と敵対していた。そんな僕を、早々信用出来る筈もない

勿論平助や幹部の皆、医療隊の皆は除くが



「精が出るな、お前ら」

『千鶴も一緒か?』



そんな僕達に降ってくる声音

振り替えると鈴々音姉さんと土方さんが、戸口の側で腕を組んでこちらを眺めていた

…うわ、絵になるなぁ



「姉さん!土方さん!」

「二人揃って道場に居るのって、珍しいなぁ」



平助の言う通り、珍しい
この二人、新撰組で一・二を争える程多忙を極める。僕達みたく安易に道場に来るのは、滅多に無い



「最近書類整理ばっかりしてて、体が鈍っていけねぇ…」



不意に土方さんの瞳が、怪しく光る

ああ、これはもしかしなくても…



「お前ら、ちっと相手してくれや」

「土方さんの!?勿論!なぁ、薫!」



副長の相手なんて、僕が安易に出来る訳がない
…あぁ、本当に…鈴々音姉さんには感謝しなくちゃ



「副長のお相手を務められるなど、光栄です」

「二人共纏めて相手してやる…かかってこい!」

「「はいっ!」」



僕は今、最高に幸せだ
こんなにも"きょうだい"が出来たんだから



見えない絆

(姉さん?)
(Ah-?)
(ありがとう、薫を気にしてくれて)
(それはあそこにいる、不器用な副長にも言え)

((それに、平助曰く…薫も"きょうだい"らしいからな))


***
ルカ様リクエスト
夢主、土方、雪村双子、平助の五人で擬似親子でほのぼの日常話 でした

初の試みの薫視点
何故か妙にシリアス風味に仕上がりました…薫だからでしょうか?←
リクに添えていない様な気が致します(--;)
大変遅くなって申し訳ありませんでした!

企画参加ありがとうございます!

12.07.13.



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