其の七

『只今』



鈴々音の眼前には、独眼竜の渾名を持つ義兄・政宗

彼の側には忠臣として名高い片倉小十郎の姿が

政宗は表情を引き攣せ、小十郎は苦笑を浮かべていた



「Oh…戻ったのは良いが、厄介事までsetとはな…」

『悪ぃ、政兄』



こうなるのは、時を些か遡る



*****



「賑やかですねっ!!」

『そら政宗公お膝元の城下町だからな』



佐助と別れた鈴々音達は、城下町へと移動した

道中風間が五月蝿かったり、土方と風間と薫の間で火花が散ったりと…大変だったが…


城下町は今の時世が戦国乱世と思えぬ程、活気に満ち溢れ。民達の表情には笑みが絶えず



「…腑抜けた奴等よ」

『民は皆、何時戦が起きても良い心構えはある』



風間が舌打ちをしながら言い捨てた。だが鈴々音は動じずに答える

そこへ周囲を見渡してた薫が、その会話に口を挟む



「政宗公の政(まつりごと)の手腕があるから、皆笑顔なんじゃない?」

「薫の言う通りだ。戦国乱世の世で、民が笑ってる…それは主君が民を思っているからこそだろ」



土方が薫に続きながら、鈴々音に目をやる



「姫様っ!!」

「姫様のお帰りだっ!!」

「ひめしゃまぁ〜お帰りなしゃ〜い!!」

「お嬢っ!!お帰りなさいませっ!!」

『応。今帰った。皆、息災で何より』



彼の視線の先には、人々から歓喜の声を掛けられる鈴々音の姿

彼女が民達に慕われているのが、一目瞭然だ。いや、鈴々音の性格もあるんだろう


そうこうしてると城下町を抜け、青葉城の前にまで辿り着く

城の門前には、武装した兵が二人立っていた



「お嬢っ!!」

「鈴々音様っ!!」

『息災の様だな、今帰還した』



兵達は感極まってか、瞳が潤み始めている。鈴々音は苦笑しながら続けた



『コイツらは客人だ、筆頭に会わせる。通してくれ』

「へいっ!!お話は聞いておりやす。皆様、お通り下せぇ」



青葉城の門が音を立てて開くと、壮大な青葉城が眼前に広がる

門を潜ると、ある女性が彼等を待っていた

彼女を見た途端、鈴々音は破顔する



『喜多っ!!』

「お帰りなさいませ、鈴々音様」

「…ねぇ、青葉。この美人なお姉さん、誰?」



首を傾げながら薫が問うと、女性は「あら」と小さく漏らす



「これは失礼致しました。私、青葉城の女中頭を務めさせて頂いております、喜多と申します」

『んで政宗兄さんの乳母でもある』

「「ふぁ…」」



喜多の素性に雪村兄妹は、共に尊敬の声を上げた

そんな二人に穏やかに笑んだ喜多は、深々と土方達に頭を下げる



「お話は伺っております、政宗様の所へご案内致します」

「お手数お掛けしてしまい、大変申し訳ありません」



土方は眉を潜めながら、喜多に頭を下げるが

彼女は「あらあら」と、苦笑を漏らすだけであった


喜多に促され、鈴々音達は青葉城の廊下を闊歩する

途中鈴々音に何度も声が掛けられる。そして土方達には、奇異の視線が向けられていた

暫くすると、喜多はある一室の前で立ち止まる

すると鈴々音は、その部屋の戸口で膝を付く



『筆頭。鈴々音、只今戻りました』

≪Oh.入れ≫

『失礼致します』



障子を開いた先には、青い着流しを纏った隻眼の青年の姿

…そして冒頭に至る



((((…若っ!!))))
(…何人かcharacter違ぇな)
(…そら当たり前だろ…つか本人に聞こえなくて良かったぜ…)


12.02.09.



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