其の六

京の都から、戦国乱世

突然突き付けられた、驚愕の事実



『因みにアレ、青葉城ね』



驚き固まる面々に対し、鈴々音は淡々と語る

彼女が指差すは、壮大な城



「…やけに詳しいな」



訝しげに睨む斎藤に、佐助は苦笑を漏らす



「そりゃ、ねぇ?」

「姫様っ!!」



突如、悲鳴地味た声色が場に響く

と同時に。鈴々音のすぐ側に黒づくめの、謎の人物が現れた



『伯利(はくり)』

「あら、伯利の旦那じゃん」



一同は彼の出現に度肝を抜くが、鈴々音と佐助には見知った顔

しかし彼女は直ぐ様、表情を顰めた



『てか、姫様って呼ぶなよ』

「全く貴女はっ!!行方不明になって幾日、どれだけ私達が心配したとっ!!」



黒づくめの者は鈴々音に問答無用に、勢い良く喋り出す

このやり取りに、佐助以外ついていけない



「あ、あの…どちら様で?」



首を傾げる一同

戸惑いが隠せないか、千鶴は震える様に問う



「ああ。伯利の旦那は、伊達軍の黒脛巾っう忍隊の忍頭…頭領さんだよ」

「…待て…今、ヤツは姫と言わなかったか?」



風間の言葉に、土方以外が顔を見合わせた


それもその筈

土方は鈴々音の素性を、全て把握しているのだから

そして彼女の素性は、土方と同郷である佐助以外は知り得ない



「だって隊長、政宗公の妹君だよ…って知らないかー」



佐助の返答に、土方以外全員が絶句した

鈴々音が政宗の義妹、と言う事を伏せたのは混乱を防ぐ為だろう


流石はオカン


伯利は土方達に気付くと、警戒心を含む視線を投げる



「姫様、この者達は?」

『俺の恩人達だ、込み入った理由があってな。伯利、先に城に戻って彼等の受け入れ体制を整えてくれ』

「しかしっ!?姫様!!」



伯利が異を唱えるのも、仕方無い


彼女は伊達領地、そして主君の青葉城へ

何処の誰かも分からない余所者を、受け入れると言っているのだ



『伯利』



力強い声音が響く

それは彼等が今まで見て来た鈴々音の姿ではなく


【伊達 政宗公 妹君】
【女戦国武将】


本当の彼女の一面を、彼等は垣間見た


伯利は鈴々音の言葉に片膝を付き、頭を下げる



「……御意のままに」

『佐助も同行し、事の顛末を説明してくれ』

「了解ー」



会話が終わると、二人は一瞬にして姿を消した



『…ま、とりあえずは青葉城に行くぞ』



(…何にせよ…幹部全員じゃなくて良かったぜ…)
(俺は近藤さん達が心配だがな…)


11.12.29.



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