其の五

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『っ…』



頭を押さえながら、鈴々音は意識を取り戻す


周囲を見渡してみると

彼女と同じ様に意識を失い、倒れている者達の姿が



『…何が、どうなってる』



痛む身体を叱咤しながら、鈴々音はふらりと立ち上がる

そして次第に、その隻眼を見開いた



『…おいおい、何のjokeだ?笑えねぇぞ…』



現在彼女が居るのは、小高い丘

そしてその眼前に広がるは、穏やかな街並みと立派な城


鈴々音にとって、その景色は見慣れたものであった



「ってぇ…ここは?」

「副長、ご無事でしたか」

「ああ斎藤、お前もな…雪村達も無事か?」

「僕も千鶴も無事だよ」

「はい…」

「っ…ここは一体…」



呆けている鈴々音を余所に

背後で倒れている土方・斎藤・薫・千鶴・風間が、次々と気付く


どうやら他の幹部の姿はない様だ



『…全員気付いたなら、こっち来い』



小高い丘に立つ鈴々音に、導かれる様に皆は首を傾げながら歩む

そしてそこからの景色を見て驚愕する



「……なっ!?」

「…まさか…」



見慣れぬ街並みと城に、驚きを隠せない一同

だが土方のみ、唯一彼等と違う台詞を口にする



『…そのまさか。ここは奥州…伊達政宗公領地だ』

「何を寝惚けた事を!?そんな馬鹿な事があるかっ!!」



さらりと語る鈴々音に、風間は信じられぬ様に叱咤した

確かに風間の言う事も一理ある


彼等は今の今まで、京の都にいたのだから



「寝惚けたって酷いね、風間の旦那」



不意に聞きなれた声が、風間の言葉に答える

それは風を纏って現れた、佐助のものだった



『お前も来ちまったか、佐助』

「みたい、俺様吃驚。軽く様子見して来たけど、やっぱ竜の旦那の所みたいよ」

『…やはり、な』



嘆息を漏らす鈴々音の視線の先には、立派にそびえる城

そして再び彼女の口が開く


その眼光は厳しいもの



『現実だ、受け入れろ。

此処はお前等が知っているのとは異なる、戦国乱世だ』



(まさかこんな形で【戻って来れる】とはな…)
(ねぇ…俺様も複雑…)

11.12.20.



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