其の九

政宗が爆弾発言を投下してから暫し

いち早く我に返った小十郎は、驚きつつも問い返す



「ま、政宗様っ!?」



だが意志は固い様で、政宗は笑みを深めた



「…不満か?コイツらは鈴々音の仲間で恩人だぞ?」

「…それは、そうですが…」



小十郎の言葉を聞いても、政宗は自身の意思を曲げず

そんな彼を見て、鈴々音は溜め息を漏らした



『…ならコイツらの事全て、私が責を持つ。それなら問題無いだろ、小十郎』

「鈴々音様っ!?」

「おい、良いのか?」



彼女が発した台詞に小十郎は勿論、土方達も目を白黒させる

そこへ佐助が苦笑しながら、話へ割って入ってきた



「と言うかさー。土方の旦那達、行く宛あるの?」

「そ、それは……」



佐助の言葉も最もで

彼等はこの時代の人間ではない、着の身着のままで来た様なものだ



「けどよ…」

『つかお前ら、ただ飯食らうのが嫌なだけじゃね?』

「……っ!!」



渋る幕末組が、表情を強張らせる

それに政宗は最初は目を見開いていたが、次第に笑い出す



「Ha!んだよ、そんなん気にしてたのか?」

「世話になる以上、俺達が何もしない訳にはいかねぇ」



眉を潜めながら土方が断言すると、隣にいた斎藤も頷く



「俺も副長に賛成です。世話になる以上、何かしないと気が済まない」

「私も何か手伝わせて下さいっ!!」

「僕もっ!!」

「…己の食い扶持は、己で稼ぐ」



土方を皮切りに、千鶴や薫、あの風間さえも申し出て来た

呆れた様に政宗は鈴々音を見やると、彼女は苦笑するだけ



『コイツらの意思、尊重してやれば?』

「Hmm…まぁ良いだろ。だが配置はどうする?」



政宗の問いに彼女は暫し思考に浸り、短い間を置いてから口を開く



『…そうだな…斎藤と風間は腕が良いから、前線隊列に加えて…薫は俺の医療隊の補佐、千鶴は女中、トシは…』

「小十郎のassistant(補佐役)はどうだ?」



義兄の提案に、鈴々音は目を見張る

土方は新撰組の参謀と、言っても過言ではない

そして小十郎は伊達軍軍師


彼等なら、相乗効果で得るものがあるかもしれない



『…Ah-.…トシ良い?』

「…好きにしやがれ」



パンと心地良い音が、急に響く

それは政宗が手を叩いた音だった



「良し、決まりだな!
お前等には明日から働いて貰う!!鈴々音も明日からだ」

『all right、任せて』





(落ち着いた所で俺様、旦那の所に戻るよ)
(悪かったな、佐助)
(水臭い事言わないでよ、隊長!!俺様、何時でも力貸すからね!!)


12.04.26.



×