現在伊達家には、三人の子供が存在する



後の政宗――嫡子 梵天丸

後の鈴々音――義理姫 紫苑



そして、紫苑が引き取られた同年に誕生した


後の小次郎―――竺丸である





輝宗と義姫は、三人を隔てなく育てた……つもりだった

だが現実はそう上手くいかない



あからさまに、紫苑のみ態度を変えている部下や女中が増えたのだ

二人はこの事に、大層頭を悩ませた




僅か三歳の子供

その子供が、自分の身の回りの事を自分でこなす

しかも無表情で何を考えているか、分からない



その噂は瞬く間に城内へ広がり…一部を除いた者以外は、紫苑を毛嫌いする様になってしまった




日に日に増していく、紫苑への罵倒・暴力

それにより、紫苑の幼い身体は限界を超えていた



「しおん!けがしてるじゃないか!?」

『…ぼんてんまる、にいさま?』



中庭の陰で紫苑は、ひっそりと怪我の手当をしていたら…

それを梵天丸が目ざとく見つけた



「…いたい、か?」



まるで自分の怪我の様に心配する彼に、紫苑は苦笑を漏らす



『だいじょうぶですよ、にいさま』

「っ!どこがだ!」




梵天丸は瞳を潤ませ、声を荒げた



「いつもそうだ!しおんは、ぼくたちをたよらない!
かぞくだろ!




彼の言葉に、紫苑は目を瞬かせる

梵天丸は涙を堪えながら、続けた



「ちちうえも、ははうえも、じくまるも、しんぱいしてる!すこしはたよれっ!

じくまるなんか、なきじゃくって…たいへんだったんだぞ!」

『…かなわないなぁ、にいさまには…』



自嘲気味に笑う彼女の瞳には、うっすらと涙が浮かんでいる



『にいさま。しんぱいしてくれて、ありがとうございます。わたしは…だいじょうぶ』

「ほんとうだな?」



じぃと、半目で睨む梵天丸に紫苑は苦笑



『はい、やくそくです』

「よし!じゃ、あそぶぞ!」



梵天丸は納得したのか、笑みを浮かべた

だが対する紫苑は、首を傾げる


実は彼女、【遊ぶ】という行為をした事がなかった

したとしても、目を付けられてしまうからだ



「…しらないのか?」

『というより。あそんだことが、ありませんね』

「じゃ、ぼくがおしえてやるよ!」

『にいさまっ!?』



満面の笑みを浮かべて、梵天丸は紫苑を引っ張って行く





この日

二人は日が落ちるまで存分に遊び、義姫にこっぴどく怒られた事を記しておく



参 完


mae tugi





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